3 / 15

第3話

「午後はレクリエーションで、ビーチバレーする予定なんだけど……」  僕は手元の予定表を見ながら答える。 「へえ、ビーチバレーか。面白そうだな」  運動部代表の三ツ谷が張り切った声を出す。普段はサッカー部の部長をしているだけに、運動は得意中の得意、と言いたげだ。 「……俺、運動はパスしたいな。せっかくだから、海の絵描いていきたいんだけど。全員強制参加?」  文化部代表の五十嵐は乗り気ではないようだ。彼は美術部長をしている。荷物が多かったのは、スケッチをするために画材を持ってきていたからのようだ。 「強制参加じゃないよ。もし絵描きたいっていうんだったら、そっち優先しても構わないから」  僕の答えに五十嵐はホッとした顔をした。 「サンキュ。文化祭に出す絵を迷ってたんだけど、海見たら急にやる気出ちゃってさ。助かるよ」 「で? ビーチバレーは誰が参加?」  箸を置いた智志が尋ねる。 「はいはいはい、俺参加!」  友野が張り切って手を挙げる。 「他は? 参加する奴、挙手して」  智志の問いに、三ツ谷と斉藤が手を挙げた。 「静也、やらないの? 先輩の言うことには従った方がいいんじゃないか?」  斉藤は隣に座る岡本に小声でそう言った。岡本はちょっと迷った後、仕方ないなという顔をして手を挙げた。あまり乗り気ではないらしい。 「千明と公彦は? 生徒会の結束を固める良い機会だと思うんだけど?」  智志は僕たちの方を向いて言う。僕と千明は顔を見合わせてから、嫌々手を挙げた。正直僕もあまり乗り気ではなかった。レクリエーションの一環で、ビーチバレーを選んだけど、それは他に良さそうな選択肢がなかったからだ。出来れば冷房が効いた部屋で、のんびり過ごす方が僕の性には合っている。 「もうっ、暑いから僕あんまり運動したくないのになあ」  千明は手を挙げた後も、ぶつぶつと文句を口にしていた。それを見た三ツ谷は「千明、後でアイス買ってやるから参加しろ」と言う。それを聞いた途端、千明の顔が輝いた。 「うそ? ほんと? みっちゃんアイス買ってくれるの?!」 「嘘じゃないよ。その代わり、お前は俺と同じチームな。でもって、真剣にプレイしろよ?」 「分かった! やるやる! 真剣にやるね!」  いきなりテンション爆上がりの千明はガッツポーズをして立ち上がる。 「アイスぐらいでこんなやる気出してくれるんだったら、安いもんだよな。……公彦にも買ってやろうか?」  隣に座る智志は僕の耳元でそう囁いた。彼の息が耳をくすぐる。思わず背筋がぞくっとして、顔が赤くなるのが分かった。 「いっ……いらないよ。そんなの買って貰わなくったって、ちゃんとやるよ!」 「なにムキになってんだよ……」 「ムキになんかなってない!」  僕は立ち上がった。テーブルに座ってた全員がびっくりした顔で僕に注目していた。 「あ……」 「公彦どうしたの?」  千明が目をまん丸にして僕を見つめている。 「ど……どうもしないよ。あの……1時半にビーチに集合だから……よろしく」  僕はそれだけ言うと、部屋に戻ろうとテーブルを離れた。後ろで三ツ谷が「おいおい、公ちゃん今日はあの日か?」と言っているのが聞こえてきた。

ともだちにシェアしよう!