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第5話
4.
少しの休憩時間を挟んだ後、僕は今度は斉藤と組んで、千明・三ツ谷組と試合をした。斉藤はすごくいい動きをしてくれたけど、何せ僕がひどい運動音痴なもんだから、千明たちにはとてもじゃないけど敵わない。放送部の千明はそれほど運動が上手いわけじゃないけど、サッカー部のエースストライカーの三ツ谷の筋肉バカにはさすがに負ける。
サッカー部では三ツ谷と智志はツートップだ。今までは先輩たちのサブに回るばかりだったけど、2年生になってからは、ほぼ毎試合レギュラーで出場して点を取りまくってるらしい。今年の県大会でも優勝候補の一つに挙げられてる、と千明から自慢気に説明された。
「先輩! そっち行きました!」
斉藤の声にハッ我に返る。何とか打ち返すけど、すぐに三ツ谷のフォローが入って、こっちにボールが戻って来てしまう。
――暑い……
熱風が自分の周りに絡みついてくる。なんでこんなことしてるんだろう? ビーチバレーなんて予定に組み込むんじゃなかった。
その時、何となくふとそっちへ目が行った。気にしていたわけじゃない。ただ、何かが気になったように思ったのだ。
――あれは……智志?
目の端に映る智志。確かさっきまでそこに座って、僕の試合を見学していたと思ったんだけど……彼は少し離れた場所で、可愛い髪の長い女の子と立ち話しをしていた。
――智志、何してるの? その子、誰?
「加賀先輩! ボール!」
「あ……」
僕はピンクのボールを追いかけて一歩足を踏み出した。
その瞬間、足に激痛が走り、世界が暗転した。
「……おい、大丈夫か?」
目を開けると、智志が心配そうに覗き込んでいた。
「うん……」
「加賀先輩、すみません。俺がボール拾えなかったから……」
智志の手を借りて半身を起こすと、斉藤が申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
「斉藤のせいじゃないよ。僕の注意力が足りなかったんだ」
「ねえ、公彦の足腫れてきてない!?」
千明の言葉を聞いて、自分の左足に目を向けると、足首の部分が赤くなって腫れていた。それを見た途端にずきんずきんと痛みを感じ始める。三ツ谷はしゃがみ込むと、僕の足首に触れて言った。
「どうやら折れてはいないみたいだ。多分、捻挫だろう。でも、すぐに冷やした方がいいな。適切に処置しないと癖になるぞ」
「そうだ、受付で言ったら氷貰えるんじゃない? あと、湿布も!」
千明の言葉に三ツ谷が頷く。
「そうだな、まずは氷で冷やす。その後湿布を貼って、しばらくじっとしておいた方がいいだろう」
「分かった。俺が部屋に連れて行く」
智志はそう言うと、僕を抱きかかえるようにして立ち上がった。
「痛っ……」
左足に体重をかけた瞬間、激痛が走る。
「歩けるか?」
「う……うん、なんとか……」
「じゃ、僕が受付で氷と湿布貰って部屋に届けるね!」
「よろしく、千明」
智志に半ば引き摺られるようにして、僕は部屋に戻った。
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