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第14話

――ほらね。……やっぱり思った通りだった。僕が思い描くような、そんな結末なんて絶対にありえないんだ。 「俺、気付いてたんだ。気付いてて、気付かないふりしてた」 ――え……? 「怖かったんだ。公彦の気持ちにどう応えたらいいのか分からなくて」 「……智志」 「ごめんな、こんなに悩むまで放っておいて……お前、俺のこと好きなんだろ?」 「……う、うん」  僕は真っ赤になって俯いた。まさか自分の気持ちを、智志に先に言われてしまうなんて、思ってもみなかった。 「……俺も、公彦が好きだ。でも、その好きって気持ちをうまく自分の中でクリアに出来てないっていうか……」 「そう、だよね。……男に好きなんて言われて、はいそうですか、なんて普通ならないよね?」 「違うよ、そうじゃなくて。公彦のことは好きだ。でも、俺の好きと、公彦が考えてる好きが、同じなのかどうなのかがよく分かってなくて……その、俺だけ暴走しちゃうんじゃないかって心配でさ……だから一歩引いてお前の出方を伺ってたっていうか……こんなの卑怯だよな。ごめん」 「そ……そうなの?」  月明かりに照らされた智志の顔は真っ赤になっていた。そして恥ずかしそうに苦笑すると、目を伏せる。僕は智志の頬に手を伸ばした。 「僕の好きは、智志の好きと同じだから」 「公彦……」 「僕ね、絶対智志には言えないって思ってた。絶対僕の気持ちは伝わらない、って思ってたから」 「……ちゃんと、伝わってたよ」 「一生言えないと思ってた」 「言ってくれて良かった」 「……智志、好き」  智志は、もう一度僕をぎゅっと抱き締めてくれた。 「俺も……好きだ」  波の音に重なるように、智志の声が僕の耳に届く。  とくんとくん、と智志の鼓動が僕の体に伝わってくる。 ――あったかい。  彼の熱が、柔らかく僕の身体を芯から溶かしていく。 ――もう、一人で泣かなくていい? 一人で悩まなくてもいい? 「公彦、一人で悩むのはもう止めろよ? 何かあったらすぐに俺に言えよ?」 「うん」  繰り返す波の音が、いつまでも優しく響き渡っていた。

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