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華持ちの限界

「華持ち」は20歳までに婚姻を申し込まれ、自分の持つ花に口付して貰い、花が結晶化しなければ花が暴走してしまう。 具体的に言うと、指に巻き付いている茎に、花の種類に関係なく棘が生えてきて、皮膚を突き破る。 更にその茎は腕を這い上がり最後には硬化して心臓を突き刺し、「華持ち」を死に至らしめるのだ。 20歳を迎えると同時に心臓を突き刺されて実際に亡くなった村人が出てからは、村の条例で19際までの婚姻が「華持ち」に義務づけられるようになった。 一夫多華制のこの村では貰い手のいない「華持ち」は村長が「華嫁」として貰い受ける。 しかし、魂が半分黒く染まった自分を村長が受け入れるはずもなく、今日19歳最後の日を迎えたのだ。 それに、もし村長が慈悲をかけてくれていたとしても、あるいは村人の誰かが婚姻を申し入れて来たとしても受け入れることは出来ない。 --僕は黒耀の「華嫁」にしかなるつもりはないのだから。 何時からだったかなんて分からない。 でもきっとあの助けられた瞬間から少しずつ、そして今はもう後戻り出来ないくらいに黒耀のことが好きで好きで堪らないのである。 「止めて下さい!僕は貴方に犯されるくらいなら明日を待たずに死んだ方がましです!!」 溢れでた感情そのままに後ろを向いてキッと相手を睨み付ける。 相手が何故かそれに怯んだ隙にアオのリードを引っ張って家へと続く道を駆けた。 その最中、ユリの花は遂に明日に向けての準備を始めた。 茎から棘が出てきて薬指に食い込む。 その痛みに気付かぬ振りをして後ろを振り向くこともせずただひたすらに走ったのだった。

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