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第3話
桐藤が、だれこいつ? と目配せをしてくるので「うちのキャスト」と答えた。
「礼央さんが働くところで俺も働かせてください!」
渚は、綺麗なお辞儀をして桐藤に頼む。
盗み聞きにしてたのかよ、てかよく聞こえたな……。
「ダメ。不採用」
きっぱりと断ると、渚から「そんなあ! そこをなんとか……!」という悲鳴が洩れる。
「てかなんで小鳥遊 が採用決めてんの?」
「オレが店長なんだろ? 採用もオレがやる」
「まあいいけど。採用しなよこの子、頑張ってね」
「ありがとうございます! 嬉しいです!」
はあ、めんどくせえ。こいつ扱いづれえのに。
渚は礼央の五個下で、何故か異常に懐かれていた。
そりゃ最初の頃は新しく入ってきた渚の世話をしてやった覚えもあるが、ここまで懐かれるのなんて完全に予想外だ。
ことあるごとに礼央さん礼央さんときゃんきゃん吠える姿は、もはや店の名物になりつつある。頭が痛い。
「渚、約束しろ」
「はい、何をですか?」
「オレの店で働きたいならオレのこと名前で呼ぶな、店長と呼べ。オレに尻尾ふるその性格も直せ。あと、ナンバーワンになり続けろ、ダサいところ見せんな」
「わかりました! 頑張ります」
「オーナーは俺なんだけど……てかパワハラじゃん、ホストこわいなあ」
詳細は追って話すと言う桐藤と連絡先を交換すると、そのまま仲間とボコられたオーナーと共に桐藤は店を出ていった。
荒れたVIPルームに、礼央と渚だけが残った。
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