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第5話

「礼央さん、髪の毛乾かすんでこっち座ってください」 「ん」    風呂上がり、ドライヤー片手にソファに腰掛ける渚の前に座った。  優しい手つきで髪の毛を乾かしてもらうと、どうしても眠たくなる。  うとうとしていると、ドライヤーの音が止んだ。  さっきまで、ドライヤーの暖かい風があたっていたうなじに、渚のしっとりとした唇が押し付けられる。   「礼央さん……」    掠れた声で露骨にセックスアピールをしてくる渚の顔を叩いた。なにすんだよ。   「ひどい、一応ホストですよ俺。 顔はやめてください!」 「じゃあさわんな」 「えー、エッチしましょうよー」 「は? エッチとか言うなキモいから」 「じゃあ仲良ししましょ? 昨日もお預けくらったんですから、今日はいいでしょ。ね、お願いします」 「寒気で人を殺す気かおまえは! だいたい、頼み込んでするセックスって惨めにならないのか?!」 「むしろ興奮します。俺のお願い聞き入れてくれるんだなって……」    シンプルに気持ちが悪い。変態を無視して寝室に行こうとすると、後ろから変態が追いかけてくる。ホラーだ。   「おねがい、礼央さん」    寝室のドアを閉める寸前で、渚が扉に足をねじ込んできた。   「おまえ悪徳訪問販売会社に転職しろよ。その足捌き絶対役に立つから」 「褒められると照れちゃいます」 「すごいすごい、だから出てけ」 「嫌です」    スリッパを履いているといえど、扉で足を挟まれてるから痛いはずなのに微動だにしないどころか、こじ開けて中に入ってくると、礼央が動けないようにきつく抱きしめられた。

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