5 / 23
第5話
「礼央さん、髪の毛乾かすんでこっち座ってください」
「ん」
風呂上がり、ドライヤー片手にソファに腰掛ける渚の前に座った。
優しい手つきで髪の毛を乾かしてもらうと、どうしても眠たくなる。
うとうとしていると、ドライヤーの音が止んだ。
さっきまで、ドライヤーの暖かい風があたっていたうなじに、渚のしっとりとした唇が押し付けられる。
「礼央さん……」
掠れた声で露骨にセックスアピールをしてくる渚の顔を叩いた。なにすんだよ。
「ひどい、一応ホストですよ俺。 顔はやめてください!」
「じゃあさわんな」
「えー、エッチしましょうよー」
「は? エッチとか言うなキモいから」
「じゃあ仲良ししましょ? 昨日もお預けくらったんですから、今日はいいでしょ。ね、お願いします」
「寒気で人を殺す気かおまえは! だいたい、頼み込んでするセックスって惨めにならないのか?!」
「むしろ興奮します。俺のお願い聞き入れてくれるんだなって……」
シンプルに気持ちが悪い。変態を無視して寝室に行こうとすると、後ろから変態が追いかけてくる。ホラーだ。
「おねがい、礼央さん」
寝室のドアを閉める寸前で、渚が扉に足をねじ込んできた。
「おまえ悪徳訪問販売会社に転職しろよ。その足捌き絶対役に立つから」
「褒められると照れちゃいます」
「すごいすごい、だから出てけ」
「嫌です」
スリッパを履いているといえど、扉で足を挟まれてるから痛いはずなのに微動だにしないどころか、こじ開けて中に入ってくると、礼央が動けないようにきつく抱きしめられた。
ともだちにシェアしよう!