営業終わり、VIPルームに流星と礼央は向かい合って座る。 　 「すごいね、流星くん。即戦力はありがたいよ」 「ありがとうございます！」 　 　流星はヘルプもそつなくこなし、体入なのに自分の客も呼んでいた。 　 「たまたまあの子から今日連絡きて、運が良かったです」 「運も実力のうちだけど、運じゃないでしょ？」 　 　たまたまバックヤードで営業している流星を見た。呼んですぐ来てくれる客がいるのは強い。 　 「あは、バレました？　やっぱ客呼べた方が給料交渉しやすいかなって思って」 「うんうん、良いね。やっぱホストはギラギラしてないと！　流星くん、一日働いてどうだった？　オレとしてはうちの店でぜひ働いてほしいと思ってる」 「こちらこそ、よろしくお願いします！」 　流星が入店してから、お店にまた緊張感が戻ってきて気がする。 　全くの新人ではないにしろ、自分の方がこの店では長く働いてるのだ。ほいほいと売り上げが抜かれたら、そりゃ悔しいだろう。 　流星自体は人懐こい性格らしく、自分から色んなキャストに声を掛けて店の雰囲気は悪くない。 　ただみんなギラギラとしている。いーねえ、ホストクラブって、こんな雰囲気じゃなきゃ楽しくない。 　流星が出勤すると、「おはようございます」と言いながら礼央のところに近づいてくる。 　礼央の前で手を合わせると、 「今日来る予定のお客さんが、店長に卓ついて欲しいっていってるんですけど、お願いできますか？！」 　と頼んできた。 「うーん、オレの指名料高いよ？」 「店長ついてくれるならドンペリ卸すって言ってました！」 「……じゃあちょっとしかつけなくてもいいなら」 　 　普段はキャッシャーから出ないようにしている。 　客の中で、キャストじゃない役職持ち、この店だと礼央、が卓につくことで他の客とは違う私をアピールしたいという客は一定数いるが、毎回相手にしていたらキリがない。 　それに、金の管理は自分でやっている方が安心出来る。 　今の内勤を信用していないわけじゃないけど、内勤が金パクって飛んだっていうのはよくある話だ。 　まあでも、ドンペリ入るなら十五分ぐらいならついてもいいかな。 　店の売り上げが良ければ店長の礼央にも特別手当が出るし。 　そんなことを考えていると、いつの間にかいた横に渚が立っていた。うわ、びっくりさせんな。