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第12話 渚視点
幸せな朝ご飯の時間をぶち壊したのは、礼央の「今日飯いらないから」発言だった。
「はい? 今なんて?」
「だーかーら、今日は飯いらない。飲み行くから、流星と」
「流星とっ?!」
「んだよその反応。うるせーな」
はいでた、流星。
流星は一ヶ月前ぐらいに他店から移籍してきたホストで、人懐こいのか誰彼構わず飯に誘い飲み歩いている。礼央も例外でなかったらしい。
ていうかあいつ結構懐いてるよな、礼央さんに……そう思うと、もやもやが広がっていく。
礼央はナンバーワンホストから店長になって飲み歩くことが少なくなった。
一度「最近飲みに行かないんですね」と聞いたら「はあ? おまえが飯作って待ってるんじゃん」と言ってくれたのでその場で思わず小躍りしそうになった。
礼央から散々キモいだの疲れるだのどっかいけだの言われるけれど、そんな奴にしっかり胃袋を掴まれているのに気付いているのだろうか。
別に料理上手なわけじゃないけど毎日作る。渚と暮らし始める前はコンビニ飯と外食で生きてきた礼央は、出来立ての家庭料理が好きらしい。
そんな幸せな同棲生活を長い間続けているのに、ここにきてまさかの邪魔が入るのが許せない。
用事があって帰るのが遅くなっても、ご飯いらないなんてほとんど言わなかったのに!
礼央から誘っているわけじゃない。
そう、きっと誘われたから仕方なくついていく。そう思おう。そう思わないと嫉妬で変なことを口走ってしまいそうだった。
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