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第15話 渚視点
真っ暗だったリビングが朝日を受けて明るくなる。
いまだに礼央からのメッセージは来ない。
さっきから携帯が鳴るたびに礼央からの連絡かと思って飛びつくが、客からのメッセージで肩透かしをくらいまくってる。
「迎えに行こうかな……」
礼央に連絡してもどうせ返事はない。
流星の連絡先は知らないけど、店のメッセージアプリのグループに入っているから連絡は取れる。
だってもう六時だよ?! 早朝営業までしてる居酒屋が憎い。いや、居酒屋じゃないのかも。
とにかく早朝営業してる店舗が片っ端から憎くなる。
何回か礼央のスマートフォンに、ダウンロードしたあとアイコンを消せる位置情報アプリダウンロードしたり、持ち物追跡タグをバッグの中に忍ばせたりしているがすぐにバレる。さすが元ナンバーワン、勘が良い。
三回目ぐらいでブチギレた礼央に食べた飯を吐くぐらい殴られてからはもうしてない。えらい、俺!
スウェットからTシャツとスキニーに着替えて家を出ようとすると、スマートフォンが鳴る。
画面を見ると礼央からの着信で、光の速さで通話ボタンをタップした。
「礼央さん?!」
『うるせー!!!!』
開口一番に叫ばれる。うるさいのは絶対礼央の方だ。
『いまからかえるから……』
声からして随分と酔っ払っている。電話の後ろで流星が『てんちょーキャラかわりすぎ』と爆笑している声も聞こえて一気に不愉快になる。
「迎えにいきます、どこで飲んでますか? 何かいるものあります?」
『あほ。なんかいいわせんの。いらねーよ、おとなしくいえでまっとけ!』
電話を切られ、ツーツーという音が聞こえた。
ちょっと舌足らずになっている礼央さんが可愛い。
なんで録音していないんだ俺は……! 「いえでまっとけ」なんて可愛い。いくらでも待っていたい気持ちと、一分一秒でもはやく会いたい気持ちでぐちゃぐちゃになる。
マンションの前で待とう。うん、広くいえばマンションの敷地内は家だし……玄関でサンダルを突っ掛けて外に出た。
エレベーターのボタンを押すと、今から出勤する出で立ちのサラリーマンが先に乗っていたので挨拶してから乗り込む。
あー、はやく一階についてくれ。
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