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第16話 渚視点
外に出て、マンション前の植木に腰掛ける。朝日が眩しい。
エレベーターで乗り合わせたサラリーマンが訝しげな目線で渚のことを見るが気にしない。周りの不審な目を頂戴するよりも、礼央の方が大事だから。
前の通りの道に、タクシーが停まるのをじっと待つ。
ーーはやく帰ってきて、礼央さん。
十五分ぐらいそわそわと座ったり、立ってうろうろしながら礼央の帰りを待っていると、一台のタクシーがマンションの前に停まった。
窓越しに礼央さんの顔が見えて、急いでタクシーのドア前まで行くと車内には礼央と、何故か流星もいた。
「は?」
「なぎさ、おかえりなさいだろーが」
「おかえりなさい、礼央さん。後ろに居る人は何? 幻?」
「俺本物〜! てかなんで渚さん?!」
「いやこっちの台詞だから。なんで流星もタクシー乗ってんの?」
「いや俺住んでるところがこの先だから一緒に乗っただけなんすけど……」
「ああそう、どうもありがとう。じゃあ」
礼央が泥酔してタクシー代を払えないといけないと思ってポケットに急いで突っ込んできた一万円札を流星に無理やり渡してタクシーのドアを閉めた。
流星のぽかんとした顔と、運転手が勝手に困るよーみたいな雰囲気で自分の大人気なさにやっと気付く。
やべえ、だっせ。
「なぎさ、はやくかえるぞ」
ぼさっと突っ立っている渚を無視してよたよたと礼央が歩きだす。
「礼央さん、待ってください」
胸の内にもやもやしたものが広がるのを感じながら、礼央の後を追いかけた。
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