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第5話

 湿った靴を抱えて、小焼ん家の庭に出た。靴を洗う用のタワシの位置も洗剤の位置も知っている。何度も遊びに来てるから何処に何が置いてあるかってのは、だいたいわかる。小焼は几帳面だから、同じ位置に片付ける。おれならそのへんに放置してるけど!  裸エプロンしても特に何も反応してくれなかったな……。おれがドキドキしてるだけになってる。あああ、駄目だ。また勃ってきた。さっきリード引っ張られて暴発したってのに。  うぅ、どうしよ、まだシたい。でも、絶対断られるってわかってる。パイズリしてくれって言うのも怒られそうだし……、自慰してるの見てもらうってのもアリか?  庭は、なんか、壁があるから、外からこっちは見えない。なんだっけこの壁の名前? ブロックだっけ? まあ、なんでもいいや。壁だ。壁! こっちは見えないけど、壁一枚向こうを車が走っている音もするし、足音もする。ドキドキする。見られたらどうしよう。おれ、裸エプロンなのに。  見られたらどう思われるんだろ? 変態って思われるか? 小焼が? おれが? どっちも? 駄目だってわかってんのに、ちょっと、誰か来ねぇかなって期待してしまう。さすがに駄目だって。息があがる。靴を持ってる手が震える。嗅いでみた。  少しのアンモニア臭を感じる。まめたの健康状態は良さそうだ。元気いっぱいだな。小焼におしっこひっかけてマーキングしてんのなら、おれもマーキングしておかねぇと……、さすがに、おれが小便をかけたら殺されそうだな。でも、でも、小焼はおれのなんだって!  あまり湿っていないほうの靴を嗅ぐ。あまり嫌なにおいはしない。おれには、小焼のにおいが、なんだって良い香りになる、のかも……。庭で靴を嗅いでるって小焼にバレたら何て言われっかな? 「変態」って言われっかな? 蔑んだ目で言われるんだろうなぁ……。まずい。おれ、何想像してんだ。ゾクゾクして、暴発しちまったし、置いていたもう一足に、思いっきり精液をかけちまった。早く洗い終わらねぇと! 朝メシを一緒に食うために!  靴をピカピカに洗って、干しておく。よし! これで、バッチリだ!  室内に戻って、キッチンに向かう。ちょうどシャワーを浴びてさっぱりした様子の小焼が来た。少し濡れた金色の髪がキラキラで綺麗だ。やっぱり、小焼は綺麗だ。 「ほい、牛乳飲むんだよな?」 「ありがとうございます」  おれは冷蔵庫から牛乳瓶を取り出し、小焼に渡す。彼は腰に手をあてて一気に飲み干していた。いつの時代の銭湯の光景だろう……。  おれは準備していた朝メシをテーブルに並べる。今日は上手くできた。自信作だ。  いつもはトースターを爆発させてっけど、今日は爆発していないし「ガスが漏れています!」というアラームも鳴らさなかった。目玉焼きも潰さずに焼けた。トーストもベーコンも焦げていない。 「ベーコンエッグトーストだ。食べてくれ!」 「では、いただきます」  小焼はベーコンエッグトーストを口に含む。何も言わずにバクバク食べてくれる。まずくても食べてくれるから、まだ油断できない。この後辛辣なセリフを吐かれるかもしれない。 「今日は上手くできた自信作なんだ!」 「……10段階評価で言うところの1です」 「おお、評価圏外からは進歩したな! やったぁ!」 「まず、塩辛い。どうしてこんなに塩辛いんだってくらいに辛い。きっとベーコンの塩味を考えずに塩コショウをめいいっぱいかけたんでしょう。次に、目玉焼きの黄身を潰さずに焼けたことを褒めてはあげますが、白身がどぅるどぅるのまま。ある意味すごい。最後に、トーストですが、何か塗りました? 妙に甘い」 「水あめ塗った! 隠し味に良いかなと思って!」 「基礎ができていない人間が隠し味を入れようとしないでください」 「わかった……」 「夏樹の分もください。これだけだと足りないです」 「え。でも、まずいんだろ?」 「はっきり言ってまずいです。でも、食べられないことはない。私の腹には足りないからください。腹が減って何かを作る気にもならない」 「ん。わかった」  不器用な優しさなんだと思う。小焼なら腹が減っていたら自分で何でも作れるから、これはおれに対する優しさだ。そう思っておく。自己解釈も大事だ。心の健康のために!  おれの分のベーコンエッグトーストまで食べ終えた小焼がキッチンに立つ。  ちょっと時間をおいて、バナナとしめじと固形チーズとにんじんを混ぜてグチャグチャにしたゲロのようなものが入った青い皿を床に置かれた。あれ、ペット用のエサ皿だよな……? 「どうぞ」 「へっ? えっ? それ、おれに……?」 「そうです。私が、お前の為に、作った、朝食です」  丁寧に強調しながら言われたら「そうなんだな!」としか返せない。  もしかして怒ってる? 怒ってるのか? おれが自信満々にまずいメシ出したから怒ってんのか? 「ああ、『待て』」  スマホの画面を見た小焼が声をかける。待てと言われなくても動けなかったけど、と思っていたら、小焼は部屋の外に出て、何かプレゼントボックスを抱えて戻って来た。しかもそれを投げつけてきたので、おれは慌てて受け止めようとするも、顔面にぶちあたって床に転がった。痛ぇ! すっげぇ痛ぇ! 「『キャッチ』と言えば良かったか……」  言われても多分無理!  起き上がってプレゼントボックスを拾う。開けて良いのかと思って小焼の顔を見つめる。「『よし』」と言われたので、青いリボンを解いて、水玉の包装紙を剥がす。白い箱が出てきた。開く。中に入っていたものは、シンプルなデザインの――赤い首輪だ。ネームプレートもついている。きっちり『NATSUKI』と彫られていた。……これ、彫った人はおれを犬だと思っているんだろうな。うん。きっとそうだよな。 「昨日宅配ボックスに届いていたようです。今さっきメールを見て知りました」 「へ、へぇ、そっかぁ」 「で、どうですか?」 「どうって言われてもなぁ」 「夏樹に似合うと思ったんですが」  小焼はおれの前に座って首輪を取り、おれの首につけた。腰をゾワゾワが這い上がってくる。息が乱れる。ちょっと、出た。フローリングに白濁が垂れた。小焼は床を撫でて、指で白濁を掬う。その動きのなんとエロいこと。おまけに指先を舐めているので、なまめかしくって、エロくって、やばい。やっぱり、まだ、シたい。 「まずい。これぐらいで出さないでもらえますか?」 「わりぃ……、がまん、でき、なくて……」  押し倒してめちゃくちゃに乱してやりたいけど、おれの力じゃ絶対に無理だ。ぶっ殺されると思う。  せめて、キスしたい。小焼に触りたい。唇を舐める。意外にもノッてくれた。唇を重ねて、何度も口づけた。気持ち良い。小焼とキスするの、気持ち良い。腰を押し付けたら、そっと押し戻された。 「興奮しすぎです」 「だって、だってぇ……シたくって……」 「はぁ。わかりましたよ。後で見ててあげますから、先に、これ、食べてください。這いつくばって、犬のように」 「ん、わかった」  頭がクラクラする。四つん這いになって、青いエサ入れに口をつける。見た目は悪いけど、味は小焼が作っただけあって美味しい。ひどい扱いされてると思うのに、妙に興奮してしまう。今の状況を親が見たらどう思うんだろ? ……想像したら、ゾクゾクする。ああ、駄目だ。シたい。我慢できない。 「食べながら床ズリするって器用ですね、変態」 「んっ! ん……、ふ、んんっ! っ……ん……」 「美味しいですか?」 「ん、おいしっ、ぃ……!」 「そういえば、ザー麺がどうとか前に言ってましたね。麺に混ぜなくても、このままどうですか?」  濡れた赤い瞳の蔑んだ視線がつきささる。これは、わかる。フェラしろってことだ。  イスに座った小焼の足の間に跪いて、下着ごとズボンを下ろす。雄々しく反り返った小焼自身を口に含む。喉奥まで咥える。こうしたら、小焼は喜んでくれる。頭を撫でてくれて嬉しい。苦しくって涙が出てきた。  今回は自己申告無く、そのまま喉射された。  なんだかんだで小焼もけっこう精力絶倫だと思うんだけど、言わないでおこう。言ったら殴られそうだ。蔑んだ視線にゾクゾクする。エプロンと床がまた汚れた。 「お前の宝剣は何回抜けるんですか?」 「わかんない……。小焼だから、こうなるんだ」 「……せっかくの休みなので、何処かに行きたいんですが」 「ん。わかった。遊びに行こう」 「その前に掃除。『キャッチ』」 「おう!」  雑巾を投げられたので、受け取る。今度は顔面で受け止めずに済んだ。  おれが床を拭いている間に、小焼はキッチンから出ていった。部屋に戻ったんだと思う。  小焼とおでかけ。楽しみだな。って、このままじゃねぇよな!?

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