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第21話
おれの隣で小焼は寝ている。
信号待ちのついでにタバコに火をつける。小焼に煙がいかないように、窓を開いて換気をしっかりしておいた。
空調の行き届いた車内は涼しいけど、開いた窓からは生ぬるい風が入ってくる。
都会と比べたら涼しいほうだとは思う。ここいらは夜になると冷えてくっから、寒暖差が激しい。助手席で無防備に寝てくれてっから、信頼されてんだなぁって、ニヤニヤが止まらない。長い睫毛がびっしり並んでいて、美少女かよって言いたくなるくらいだ。あー、ほんっと、綺麗な顔してる。美少女の顔にムキムキマッチョな体って、もう最高にギャップがある。2次元から飛び出してきてんじゃねぇかな。
小焼の顔をじーっと見ていたら、信号が変わっていたらしい。後続車にクラクションを鳴らされた。慌てて走る。やばい。こんなくだらない理由で喧嘩になったら大変だ。
すっかり景色は田舎へ変わり、小焼の家に着いた。気持ち良さそうに寝てっから、起こしてやるのも悪い気がする。でも、起こさないと、すぐに起こせって怒られっから、肩を叩く。ゆっくり瞼が開く。赤い瞳が涙で濡れていた。
「ふわぁ……、つきましたか」
「ん。ついたよ」
「ありがとうございます」
そう言って小焼は車から降りる。運転席側に回ってきてドアを開いてくれた。何のサービスだよ。惚れちまうだろ! 既に惚れてっけど!
小焼ん家に入る。エアコンのタイマーをセットしていたらしく、ほどよく涼しい。さすが小焼だな。カギをかけて、靴を並べて、あがらせてもらう。
今日の夕飯は何だろ? 小焼の手料理なら何でも美味いから好きだ。
「そういえば、明日の準備は終わりましたか?」
「おう。バッチリしてる! ふゆがな! 小焼はしたか?」
「試着しろと言われてたんですが、まだしてないです。……見てもらえますか?」
「わかった!」
小焼の部屋に向かう。ドアを開いてすぐ目の前に、『ブレインアンダーグラウンド』の警察隊長ベースの衣装があった。ウィッグも横に置かれている。
「そういや、ベースって片目が紫だけど、カラコン入れんのか?」
「買っておきましたよ。母のせいでウィッグとカラコンのつけ方はわかります」
「そっか」
「ただ、メイクはよくわからないので……、夏樹に任せます」
「超ウルトラハイパーカリスマ女装モデルのなちゅちゃんに任せとけ!」
「はい」
小焼の髪なら、そのままいけそうな気もすんだけど、地毛コスはマナー違反って言う人もいるし、ふゆがきちんとウィッグのセットもしてくれたから、これでいこう。
とりあえず、試着だな!
へそ出しデザインでおっぱいがひきたつエッチな服だなぁ……。男だけど、すんごいおっぱいだな……改めて見たら。
「ンッ! 夏樹!」
「わ、わりぃ!」
「この服……擦れますね……」
何が、とは言わなかったけど、乳首だな。乳首用のシートなら、ふゆが買ってたから明日は大丈夫かな。今はちょっとまずそうだけど。
そういや、おれ、明日、ブラジャーしなきゃなんねぇんだったや……。偽おっぱい……。
なんやかんやで、衣装を着せることができた。サイズは……ジャストフィット。胸の谷間が最高だ。触りたいけど、我慢!
「これで良いんですか?」
「おう。ふゆがめちゃくちゃ興奮しそうだな」
「……夏樹はしないんですか?」
「えっ!?」
不意打ちでキスはずるい。しかもキスが上手いから困る。
舌を絡めて、吸って。まるで噛みつくような、食われてるような、そんなキス。と、同時にベッドに倒れ込んだ。ギシッ、とベッドが軋む。
「なつ、き……」
「え、え、えっ!? 小焼!?」
何か変なモノでも食ったか? 積極的過ぎる。
おれの体を小焼の手が滑っていく。軽く触れられるだけで、体の中心が芯をもって、熱くなる。上ずった甘い声が口から出ていく。なんだか恥ずかしい。
「ちょっ……小焼ッ! ンッぁ、あ! ……ま、……ってぇ! ひ、ぁ……!」
声が吐息に変わる。気持ち良くて、やばい。
服を剥ぎ取られて、真っ裸にされた。どういうつもりなんだかわかんねぇ! 何で急にこんなことしてんだ? やっぱり変なモノでも食っ……ちがう。逆だ。腹減ってんだ!
「食いたい……」
「おれは食い物じゃねぇぞ! ぁっ! ィッ、ぁ出、るぅ!」
体を丸めたと同時に、目の前に星が散る。
濡れた赤い目が睨んでくる。怖いくらいに綺麗だ。おれの出した欲を舐め取ってる姿がすんごいエロい。次に言われる言葉はわかる。精液の味についてだ。
「まずい……」
ほら、言うと思った。
おれのちんこを扱きつつ、小焼は服を脱ぐ。
そうそう、その服は汚しちゃまずいからな。早く脱いで欲しかった。
でも、どうしてこんなに迫ってきてんだかわかんねぇ! めちゃくちゃ腹が減ってるにしても、こんなことをするのは初めてだ。小焼はセックスの準備もしてねぇし、『よし』ってコマンドも言ってない。
おれ、小焼に触って、良いのか? 良いよな?
おれを起こして、小焼は床に座った。脚の間に入ってっから、パイズリしてくれるみたいだ。触って、良いよな?
「ひぁ! アッ! な、っ……ぃ! ぁ、あ」
「小焼のおっぱいきもちぃから、お返し!」
「ゃ、らぁ! ァーッ! ぁ……! ひっ……ん、ぁにゃ……ちゅ、き、ぁ!」
気持ち良過ぎて、すぐに発射しちまった。小焼もイッたらしい。一緒にイッてんの、嬉しいな。
小焼の胸と顔に精液がかかって、たいへんエロい! また体が熱くなってくる。ずっとお預けくらってたから、溜まってる。「自慰するな」って言われたから、ずーっとしてなかった。危うく貞操帯を与えられそうだったくらいだ。……もう買ってあったから、いつかつけられそうだ! 想像したら、ゾクゾクしてきた!
「小焼。これって、『ご褒美』なのか?」
「……違いますよ」
「そうなのか。じゃあ、もっとすんごいのくれるんだな!」
「気が向いたらあげます。腹が減りました」
あ……、冷めちまったか。スーパー賢者タイムになったかぁ。おれはまだやりたかったんだけどなぁ……。小焼が冷静になったからか、おれも落ち着いてきた。
明日は大事なイベントがあっから、明日は『ご褒美』くれっかな?
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