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第3話
退職する事になったぼくは、住んでいたマンションを引き払って実家に帰る事にした。
しばらくいなかった間にマンションには沢山の郵便物が溜まっていて、その中に妻が送ってきたらしい茶封筒が入っていた。
「…………」
妻の署名捺印がされた離婚届だけが入っていた茶封筒。
何故。
どうして。
あの日だって悠太郎を抱きながら笑顔で見送ってくれたのに。
ぼくは溢れる涙を堪えきれなかった。
悠太郎がいない事も手伝って、ぼくは泣きながら荷物を片付け、使えそうな大きい家具はリサイクルショップに引き取ってもらい、それ以外は粗大ゴミに出すように手配し、大家さんにお礼を言うとマンションを後にした。
母は幼稚園教諭の資格があるのだから社会復帰はいつでも出来る、すぐ働いてまた体調を崩して同じ事を繰り返さない為にも今はゆっくり休んで元気になったら働きなさいと言ってくれたけど、父はそれを許してはくれなかった。
というのも、妻とは職場で知り合い、父の許しを得る前に授かり婚で結婚していたからだ。
授かり婚は男の恥だと思っていた父にとって、一人息子のぼくがそんな結婚をしてしまい、当時は殴られたりもした。
母が父を説得してくれてようやく結婚出来たのにこんな結果になってしまった事で父の怒りは再燃し、
『俺の言った通りだっただろう。やはりあの女はろくでもない女だったんだ。そんな女を選んだお前をいつまでも家に置いて置く訳にはいかない。早く仕事を見つけてここから出ていけ』
とぼくを殴り飛ばした後で言った。
「……分かりました……」
とは言ったものの、僕は働かなきゃダメだっていう気持ちはあったけど、どこでどうやって働けばいいんだろうと思っていた。
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