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第5話
道中の閑静な住宅街を歩いていると、『新緑(しんりょく)幼稚園』と書かれたログハウスのような造りのその建物から、ピアノの音色が聞こえてきた。
「ぴあの!!ぴあの!!」
「あっ、悠太郎、待って!!」
ピアノの音が大好きな悠太郎は、繋いでいたぼくの手を払って中に入ろうとする。
「ぴあの!!」
「す、すみません、失礼します……」
玄関は開いていて、悠太郎は靴も脱がずに行こうとするので靴を脱がせて上がらせてもらっていた。
そこからすぐ、真正面に広いホールがあって、ピアノはその左端にあり、男の人がピアノを弾いていた。
優しい音色が奏でていたのは、チャイコフスキーの『白鳥の湖』の中の『情景』だった。
悠太郎がすぐ側まで行ってしまい、ぼくもそこまで行くと悠太郎を膝の上に乗せて座った。
ぼくらに気づいていないのか、その男の人はとても気持ち良さそうにピアノを弾いていた。
茶色い髪にパーマをかけた、肌の色がすごく白くてギリシャ彫刻みたいにキレイな顔立ちの男の人で、日本人なのか外国人なのか分からなかった。
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