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第8話

「春翔、お待たせー!!」 青木さんが悠太郎のために3曲を演奏してくれた後、別の男の人がホールに入ってきた。 青木さんと同じように子供向けアニメのキャラクターのエプロンを着た、ぼくと同じ位か少し低い身長に青木さんよりも明るい茶色の髪で大きな瞳と厚い唇が印象的な人だったんだけど、どこかで見覚えのある顔だった。 「お疲れ様、春楓。桃田くん、こちらが先程お話していた僕の幼馴染、黄嶋春楓(はるか)です。幼稚園では主任教諭を務めていて、サッカーも上手で子供たちの人気ナンバーワンの教諭です。安心して悠太郎くんをお任せください」 「よろしくお願い致します、桃田陽輔です」 僕は黄嶋さんに頭を下げた。 「あ、あぁ、よろしく。って、春翔、俺のコト褒めすぎじゃね?」 「僕は嘘なんかついてないよ。新庄さんだって春楓が一番優秀だってこないだ言っていたじゃない」 「あー、そうだったかもな。でも、俺は子供たちが喜んでくれてたらそれでいいんだけど」 黄嶋さんはぼくに笑顔で応えてくれたあと、青木さんと話し始める。 ふたりが話しているのを見ると、すごく信頼し合っているように見えた。 内気だったぼくは友人もなかなか出来ず、学生時代はほとんどひとりで過ごしてきたから羨ましいなぁって思った。 って、黄嶋って……。 「ええっ!?まさか黄嶋賢治郎さんの息子さん!?」 ぼくは思わず口に出してしまっていた。 「そ、そうだけど。それがどうかした?」 「えええっ!?息子さんってピアノがめちゃくちゃ上手でテレビに何回も出てた人って事ですよね?」 驚いている黄嶋さんに、ぼくは興奮ぎみに聞いてしまう。 黄嶋賢治郎さんのコンサートの後、黄嶋さんを紹介するテレビ番組が放送されて、その時に息子さんも出て一緒にピアノを弾いていた記憶があった。 すごくピアノが上手で、すごく楽しそうに弾く人だなぁって思って見ていたんだけど、そんなテレビに出た事がある人と出会えるなんて。 「ええ、春楓はサッカーもやってたからコンクールには出ていなかったんですが、ピアノはうちの職員の中で一番上手なんですよ」 僕の質問に、青木さんが代わりに答える。 「おい、春翔、そんな嘘つくなって」 「春楓は自分のチカラを謙遜し過ぎだよ。君のピアノが一番だって皆が思ってる」 黄嶋さんの肩を抱きながら話す青木さんに黄嶋さんが反論すると、青木さんはこう言いながら黄嶋さんの頬に触れる。 「や、やめろってば!!人がいるんだぞ!!」 「……あぁ、ごめんね、春楓。ちょっと意地悪し過ぎちゃった」 黄嶋さんが顔を真っ赤にして青木さんに言うと、青木さんは黄嶋さんの頭を撫でながら謝っていた。 意地悪……なんだろうか。 ぼくの目にはそんな風には見えなかったけど。

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