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第10話

ぼくはふたりに今の状況を話した。 話しているうちにまた泣いてしまって、青木さんがまたティッシュの箱を渡してきてくれた。 「……成程。奥様がお子さんに対しネグレクト状態だった可能性があり、挙げ句一方的に出て行ってしまい、貴方は精神的ダメージを受けて働けなくなり、実家に居候しているが父親に早く仕事に就いて出て行けと言われ殴られた……という事で宜しいでしょうか?」 ぼくの話をスマホを使って纏めたみたいで、赤木さんは画面を見ながらゆっくりと丁寧に確認してくる。 その左手の薬指には青木さんと同じように金色の指輪が嵌めてあって、どうやら赤木さんもご結婚されてるみたいだ。 「あ……はい……」 「大変な思いをしたんですね、可哀想に。春希、何とかならない?」 「そうだね……大学院時代のゼミの仲間で弁護士になった人が何人かいて連絡先を知っているから聞いてみるよ。話を聞く限り、貴方から奥様やその相手に慰謝料請求は可能な案件ではないかと僕は思います」 「あ、ありがとうございます!!」 なんだか、ぼくはすごい人達に出会えたみたいだ。 見ず知らずのぼくの話を親身になって聞いてくれて、助けてくれて。 本当にありがたくて、また涙が出てしまう。

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