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第12話

青木さん、赤木さんと一緒にホールに向かうと、そこでは悠太郎が黄嶋さんと楽しそうにサッカーをして遊んでいた。 サッカーなんてした事がなかったのに、一生懸命ボールを追いかけて、そんなに飛んでないけどちゃんとボールに足を当てて蹴ったりしてて、すごく感動してしまう。 「お、話終わったの?」 「うん、これから桃田くんがうちの幼稚園で働けるかどうかチェックする事にしたんだ」 「へー。悠太郎、パパのピアノ、聴きたい?」 「うん!パパのピアノ、きく!!」 すっかり黄嶋さんに懐いている悠太郎。 普段、知らない人に抱っこされるのも嫌がるのに、黄嶋さんに抱かれて笑顔を見せているなんて。 ぼく……こんなに凄い人たちと一緒に働ける自信、全然ないな……。 「桃田くん、好きな曲は何?」 「えっ?」 黄嶋さんに突然聞かれ、ぼくは悩んでしまう。 「俺は『子犬のワルツ』かな。速い曲がゲームやってるみたいで楽しくて好きなんだ。桃田くんは?」 「ぼくは……ゆっくりした曲が好きです」 「へぇ。なら、ブラームスの『愛のワルツ』は?」 「あ……はい……弾けます……」 偶然、本当に偶然なんだけど、その曲はぼくが暗譜している曲のひとつで、コンクールで入賞した事もある曲だった。 「じゃ、それ弾けばいいんじゃない?」 「は、はい、分かりました……」 とは言ったものの、コンクール以来の緊張にぼくは襲われた。

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