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第14話
青木さんと連絡先を交換した翌日、青木さんからすぐに連絡を頂いたぼくは悠太郎を連れ、再び新緑幼稚園を訪れていた。
今日は園長先生にお会いする事になっていたので、就職試験以来のスーツを着て、履歴書も書いて持参していた。
「おはようございます」
春休み中という園内には子供たちの姿はない。
教えて頂いた駐車場に車を停め、幼稚園に向かった。
「おっ!おはよ、桃田くん!!園長先生はまだ来てないから、来るまでピアノの練習してなよ」
ぼくが着いた時、黄嶋さんが玄関の掃除をしていた。
昨日は気づかなかったけど、黄嶋さんも左手の薬指に金色の指輪をしているのを見つけてしまう。
3人共、ご結婚されてるんだ。
「ありがとうございます。ピアノ、お借りします」
「悠太郎は俺とサッカーしようぜ!今日はあったかいし天気がいいから外でやるぞ!!」
「うん!」
悠太郎は嬉しそうに黄嶋さんと外に行ってしまう。
ぼくはひとりホールに向かうと、ピアノの練習を始めた。
昨日間違えた所を重点的に練習し、最後に通しで弾く。
うん、大丈夫、昨日より上手く弾けた。
もう1回弾こうかな。
そう思った時だった。
「そのままもう一度弾いてみて」
赤木さんとは違う低い男の人の声がして、その声のする方を向くと青木さんと赤木さん、そして声の主だと思う銀髪をひとつに束ねた口髭のある男の人と、黒髪で肩くらいまでの髪をキレイに切り揃えている女の人が立っていた。
「あ……はい……」
あの人が園長先生なんだ。
そう思うとドキドキしたけど、ぼくは深呼吸して気持ちを落ち着かせ、いつものようにピアノを弾いた。
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