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第44話
「お前、今日からオレのセフレ。決定な」
「えっ、何でですか?」
ティッシュで床の汚れを片付けていると、紺野さんが言い出す。
「いいだろ?風俗もデリヘルも保護者に見つかったらマズイからダメだし、お前ならガキいる事以外面倒くさくなさそうだし。お前もずっと何もなし……なんて無理って分かるだろ?飽きたらやめればいいだけの話だ」
「そんな……勝手に決めないで……」
ぼくが断ろうとすると、紺野さんはスマホの画面を見せてくる。
ぼくがイカせてと懇願している声と、テーブルを支えに紺野さんといかがわしいコトをしている姿がそこにあった。
「これ、春翔に見せてもいいんだ?春楓や春希ならスルーしてくれるけど、春翔は仕事の事になるとわりと真面目だからきっとオヤジにチクるぜ?そしたらお前、せっかく就職決まったのにクビになっちまうかもな……」
「そんな……」
こんな事になってしまうなんて。
ぼくは、なんて浅はかだったんだろう。
「んな顔すんなって。悪いようにはしねーからさ、約束する」
泣きそうになると、紺野さんは少し真面目な表情になってぼくにキスしてきた。
「……分かりました……」
そのキスが思いのほか優しくて、ぼくは自分が人恋しいという感情を抑えつけてきた事に気づいてしまった。
だから、今は紺野さんに甘えよう。
そう思ってしまったんだ。
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