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第57話

アイスクリームを食べ終えると、ぼくたちはキッチンで食器の片付けをしながら話していた。 「春楓たちの事はさ、オレも聞いた話だから確かなコトは分かんねーけど、親達が渋々認めた後で一悶着あったらしい」 「そうなんだ……」 浩は、はるき先生のお父さんがはるか先生のお母さんに文句を言いに行って、その結果はるか先生のお母さんが引越する事になった話を教えてくれた。 「オレが見たのは、その話を泣きながら話す春希を春楓が慰めてたとこなんだよ。たまたまオレがあいつらんちに遊びに行って、酒飲んで寝て起きたらそんな事になってた。めっちゃ気まずいから寝たフリしてたけど」 「それは……確かに……」 その後、普通に接してる浩がすごいなぁってぼくは思った。 「春楓たち、元々あんまり親と連絡取ってなかったらしいけど、それがあって全く連絡取らなくなったっぽい」 「先生方、あんなに明るい顔をしてるけど、辛い思いされたんだね……」 自分のせいで大切な人が傷つく辛さは分かってるつもりだ。 だから話を聞いてすごく、胸が締め付けられた。 「それはお前もだろ?だいぶ明るくなってきたけど、初めて会った時とか死にかけてたよな」 「そうかも。初めての時、浩の事、怖くて無理って思ったし」 こう話したらどうなるのかな、って思ったぼくは、浩にちょっと意地悪な事を言ってしまう。 「オレだってお前の事、最初は無理って思った。けど、お前とピアノ弾いてから、なんかイけるかもって思ったんだよなー」 浩は気にしてないというか、そう受け取らなかったみたいだ。 「そうなんだ。でも、あの時どうしてぼくに連弾やろうって声をかけてくれたの?」 「んー、何でだろ。酔っ払ってたから?分かんねぇ。てかもうそんな事どーでもいいじゃん……」 そう言って、浩はぼくの手を引っ張って自分の股間に触れさせる。 「な……何?」 「さっき上の空だったんだ。今度は目の前のコトだけ考えろよ」 急に真面目な顔をして、浩はぼくにキスしてきた。 少し強引な、でも情熱的なそれにぼくは酔いしれて、そのまま流されていたんだ。

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