66 / 151

第66話

そこには浩の他に若い女の子がいて、浩に抱きついていた。 「…………」 知らない人に驚いたのか、悠太郎はぼくにしがみついてくる。 ぼくは悠太郎を抱っこすると、声をかけるべきか迷っていた。 「……おっ、ヨースケ!悠太郎!」 すると、浩がぼくらを見つけてくれる。 「ヒロ、せっかく会えたのにどこ行くの?」 「だから何回も言ってんじゃん、後輩と約束してるからお前に付き合ってられねーって。じゃあな」 ぼくらの方に歩いてくる浩を止めようとする女の子。 ぼくよりは低いけど、女の子にしては背が割と高めで、髪の長い綺麗な子だった。 「待って!待ってよ、ヒロ!!」 「離せよ。お前、こんなコトしたからクビになったの、忘れたのか?」 女の子が掴んだ腕を振りほどくと、浩はぼくの知らない、冷たい口調で言った。 「オレの前に2度と現れるなって言われたんだ、見かけても声かけんじゃねーよ。ケーサツ呼ぶぞ?」 すごく、すごく怖くて、 こんな浩を悠太郎に見せたくなくて、ぼくは浩に背を向けて走っていた。

ともだちにシェアしよう!