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第66話
そこには浩の他に若い女の子がいて、浩に抱きついていた。
「…………」
知らない人に驚いたのか、悠太郎はぼくにしがみついてくる。
ぼくは悠太郎を抱っこすると、声をかけるべきか迷っていた。
「……おっ、ヨースケ!悠太郎!」
すると、浩がぼくらを見つけてくれる。
「ヒロ、せっかく会えたのにどこ行くの?」
「だから何回も言ってんじゃん、後輩と約束してるからお前に付き合ってられねーって。じゃあな」
ぼくらの方に歩いてくる浩を止めようとする女の子。
ぼくよりは低いけど、女の子にしては背が割と高めで、髪の長い綺麗な子だった。
「待って!待ってよ、ヒロ!!」
「離せよ。お前、こんなコトしたからクビになったの、忘れたのか?」
女の子が掴んだ腕を振りほどくと、浩はぼくの知らない、冷たい口調で言った。
「オレの前に2度と現れるなって言われたんだ、見かけても声かけんじゃねーよ。ケーサツ呼ぶぞ?」
すごく、すごく怖くて、 こんな浩を悠太郎に見せたくなくて、ぼくは浩に背を向けて走っていた。
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