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第71話
『こんにちは、チームHARUです。閲覧ありがとうございます!』
ライブは生配信らしく、先生方は全員パンダの被り物をして顔を隠し、声も機械で操作しているのか違う声になって出演していた。
「ぱんだ!!」
「しーっ、悠太郎、静かに見るって約束したよ?」
先生方の被り物に大喜びの悠太郎。
ぼくと悠太郎は声が入らないように遠くからその様子を見ていた。
『ゴールデンウィーク、もうすぐ終わりますがいかがお過ごしですか?……あぁ、お仕事の方もいらっしゃるんですね、お疲れ様です』
はると先生がメインで話していて、はるか先生とはるき先生は横に並んでいた。
『それでは今日のライブ配信、始めさせて頂きますね。まずは3人で……』
はると先生のアナウンスの後、先生方は1台のピアノの前に3人で座り、手を繋いで一呼吸置いた後、テーマパークのパレードで使われている曲を弾いた。
だんだんテンポが上がっていくのに3人がずっと揃っていて、そのテーマパークに来ているような気持ちになる素晴らしい演奏だった。
『ありがとうございます。父パンダさんが高音パート、珍しいですねという声、頂いておりますね。そう言われれば確かに父パンダ、低音パートが多いかもしれませんね』
どうやら、はるか先生が子パンダ、はるき先生が父パンダ、はると先生が母パンダという名前で演奏しているみたいだ。
それからおひとりずつの演奏や連弾をし、最後に浩の出番がやってくる。
「うま!!」
悠太郎が嬉しそうに言った。
浩は、白い馬の被り物をして演奏する事になっていたりする。
『今日はサプライズで、僕らの後輩、白馬くんも演奏します。白馬くん、子パンダとの連弾に挑戦です』
はるか先生と一緒にオッフェンバックの『天国と地獄』を弾く浩。
すごく速いテンポで弾いていてすごいなぁって思ったんだけど、弾き終えると、はるか先生が、
『お前、遅せぇよ!もう少し早く弾けって!!』
とイラついた口調で言った。
『すーいーまーせーん、これが精一杯でしたー』
ふざけた口調で謝る浩。
『……ちょっと代わって』
そこにはるき先生が入ってくる。
『もう1回弾いていい?』
『父パンダと子パンダ、納得いかなかったみたいです。皆さんからは高評価頂いてるんですけどね』
はると先生がアナウンスし、浩が避けてぼくらの側まで来ると、はるか先生とはるき先生がもう一度『天国と地獄』を弾く。
とんでもないスピードで弾くふたり。
しかもはるき先生とはるか先生、途中でアレンジを加えたり、場所を交代して弾いたりして、すごくカッコよかったんだ。
「あいつら、マジかよ」
馬の被り物を脱いで汗だくになっている浩が横で言う。
『子パンダ、満足した?』
『もちろん!さっすが父パンダ!!』
弾き終えてハイタッチを交わすふたり。
『白馬くん、このまま微妙な感じで終わるのはちょっと可哀想なので、最後にわたしと連弾しましょうか』
『お、おう!やるやる!!』
はると先生に言われ、浩はもう一度馬の被り物を被るとピアノに向かって歩いていく。
先生が浩に楽譜を見せて弾き始めたのは、浩が以前ぼくにダメ出ししまくった『3つの軍隊行進曲第1番』だった。
はると先生の優美なメロディに合わせて弾く浩。
ぼくの時とは少し違う弾き方だったけど、上手い事に変わりはなかった。
『おー、いんじゃね?馬』
『白馬くんだ!ちゃんと言えよ!!』
はるか先生の言葉にツッコミを入れる浩。
こうして、1時間ほどのオンラインライブは終了していた。
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