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第72話
ライブが終わると、そのまま打ち上げという事で皆さんと夜ご飯を一緒に食べる事になった。
「悠太郎、大人しく見てて偉かったぞ!ありがとな!!」
「はるかせんせい、ぼくもぱんだになりたい!!」
「そっかぁ、じゃあ今度、悠太郎の分も用意しとくからな」
「わーい!!」
はるか先生、はるき先生とピアノを弾いて楽しそうにしている悠太郎。
ぼくははると先生と一緒にキッチンに立ち、手巻き寿司作りのお手伝いをしていた。
「うん、だいぶ包丁の使い方が上手になってきましたね」
「ありがとうございます!」
はると先生に教えて頂きながらお刺身を手巻き寿司で使える大きさに切る。
ちょっと歪な形のもあったけど、だいたいは綺麗に切る事が出来た。
「春翔、サラダこんなんでいい?」
「うん、ありがとう、浩」
ダイニングテーブルでドレッシング作りをしていた浩は、ぼくが切った野菜にそれを入れて混ぜ、はると先生に渡す。
先生はそれを大きなお皿の周りに盛り付けた後で、中央に唐揚げを載せていった。
「そういえば、どうして被り物をして演奏しているんですか?」
「あぁ、身元が知られたら何かと面倒な事になるからですよ。特にインターネットはどこの誰が見ているか分かりませんからね」
「そうなんですね!それで声も違う声に変えてたんですね!!」
「ええ。でも、実際にホールでコンサートをする時は今のようにパソコンを使う訳ではないので、僕らを知っている人には気づかれている可能性もありますけどね」
ぼくの質問にはると先生は笑顔で答えてくれた。
「夏休みにまた配信する予定なんですが、もも先生も参加しませんか?いい経験になると思いますよ」
「えっ!?ぼくが……ですか?」
「おっ、いーんじゃね?夏くらいにはもう少しピアノ上手くなってるかもしんねーし」
はると先生に言われてびっくりしていると、浩がそれを後押ししてくる。
「浩ももう少し速いテンポで完璧に曲を弾けるようにならないとね」
「うるせーな!春楓が速すぎなんだよ!!」
「ん……まぁね。でも、僕も春希も春楓が気持ち良く弾けるようになる為にすごく努力したよ?浩も相手に合わせる努力、もう少しした方がいいと思うけど」
「……チッ、春翔ってやる気にさせんの上手いよな」
相手に合わせる。
ぼくなんて弾く事で精一杯で全然足りない。
もっと頑張らなきゃ。
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