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第84話
悠太郎を寝かしつけた後、ぼくは今日の出来事について浩と話していた。
「園に慣れてきて、自分と違う存在にビビって、どうしていいか分かんなくなったのかもな、そのガキ共」
「……かもしれないね。ぼくから見たら春海くんは絵に描かれてる天使みたいに見えるけど、子供の目線で見たらそうじゃないんだなぁって思ったよ。でも、うちの悠太郎がお友達を守る行動を取るなんて、思ってもみなかった。すごく、すごく嬉しかった……」
最終的には泣かされてしまったけど、悠太郎の勇気ある行動にぼくは感動し、その場面を思い浮かべると涙が出た。
「……親バカだな、ホント……」
「だ……だって……」
浩はぼくにティッシュの箱を渡し、頭を撫でてくれた。
「お前のそーゆートコ、嫌いじゃねーよ」
「何、それ。随分上からじゃない?」
「オレの方がここのセンパイだからな」
「……そう言えばそうだったね」
浩のこういう所、ちょっといいなって思う。
それに……浩に撫でられるとすごくホッとするんだ。
「って、お前、ガキの頃の春楓たちの写真、興味ある?」
「えっ、急にどうしたの?」
「今日の話を聞いて思い出したんだよ、昔めちゃくちゃ面白くて春翔のアルバムの写真、撮ってた事をさ」
ぼくの返事も聞かずに、浩はスマホを操作すると見せてくる。
「幼稚園の時の3人」
「えぇぇっ!?」
浩が見せてきた画像は、はるか先生しか面影のない先生方の画像だった。
「春楓、変わってなさすぎだよなー」
「そっち?はるき先生とはると先生が違い過ぎるんじゃなくて?」
はるか先生を中心に、幼稚園の制服を着て並んでいる画像。
一番背が高いのがはるか先生で、おふたりは小柄で痩せていた。
はると先生はぼくの想像以上に可愛くて天使みたいで、はるき先生は眼鏡をかけてはいたけど今みたいな怖い雰囲気は全然なく、むしろ気弱そうな子に見えた。
「いや、ここは変わらねぇ春楓が面白くね?」
そう言って浩は別の画像を見せてくれる。
「これは確か小学校卒業くらいの時のだったかな。春楓、変わってねーよな」
「う……ん、まぁ、確かに……」
同じ並びで制服だけが違う画像。
確かにはるか先生は今と変わらない明るい笑顔で先生方の肩を抱いていて、おふたりは幼稚園の頃と同じく小柄で痩せていて、はるか先生の身長が一番高かった。
「……で、これが高校卒業の時」
「………」
そこには、自撮りだったみたいだけど、笑顔のはるか先生にべったり……という感じの先生方がいて、その姿は高校の制服姿だったけどぼくの知るものとほぼ変わりなかった。
おふたりとも、中学生になってから背が伸びた……っていう事なんだろうな。
「春楓……全然変わってねーの、すごくね?めっちゃ笑えるんだけど」
笑いながら話す浩。
「……でも、春希たちがずっと好きだっていうのも分かる気がするよな。春翔なんて酔っ払って『春楓は僕の太陽』って言ってた事あったんだけど、あいつの笑顔見てたらこっちも元気もらえるし」
「うん、そうだね」
はるか先生、やっぱりすごい方だなぁ。
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