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第95話
浩に走り方を指導されて少しだけタイムは縮められたけど、当日までにどうこうなるものではなさそうだった。
そうしているうちに園長先生が何食わぬ顔で園庭に来て、悠太郎がかけっこの練習している事を褒めてくれた。
「誰のせいでこうなったか分かってんだよな?オヤジ」
「あぁ、済まなかったね。もう大丈夫だから退勤して構わないよ」
「職員室に行ったらゆみ先生が真っ裸でいるとかねーよな?」
笑顔の園長先生に浩が耳打ちするのをぼくは聞いてしまった。
「ははは、そんな事ある訳ないだろう。ゆみ先生は先に帰られたよ」
浩の言葉に全然動じず、いつものスマートな笑顔の園長先生。
「……ならいいけど」
「春翔君たちは?」
「草むしりして汗かいたって言って着替えに帰った」
「そうか。それは済まない事をしたな」
「いんじゃね?あいつらは。連絡しとくけどさ」
「あぁ、頼むよ。悠太郎くん、明日もまた元気で幼稚園に来てね」
「はい、えんちょうせんせい!!」
園長先生に頭を撫でられ、嬉しそうにする悠太郎。
「……帰るか、腹減ったし。悠太郎、オレと一緒にハンバーグ作るか」
「うん!ひろせんせい、ぼく、くまさんのハンバーグつくりたい!」
「りょーかい、んじゃ行くか」
園長先生が帰ってすぐ、ぼくらも園庭を後にした。
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