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第102話

研修の会場は街にある駅から電車に乗り、1時間ほど行った駅からすぐのホテルだった。 ぼくは悠太郎をはると先生のお宅に送り届けると、浩と幼稚園で落ち合い、一緒に電車に乗っていた。 到着駅には、誰でも弾けるようなグランドピアノが置かれていた。 「研修終わって時間あったら弾いてみねー?」 「うん、いいよ」 こんな風に家族以外の人と出かけるのは結婚前に妻とデートした以来だ。 私服でいい事にはなっていたけど、ぼくも浩も無地の半袖シャツにテーパードパンツを履いて、あまりカジュアル過ぎない服装だった。 「ヨースケ、悠太郎と離れて寂しいんだろ」 「うん、それはそうだよ」 「だよな……」 浩が一瞬だけ不機嫌そうな顔をする。 「どうしたの?」 「いや、別に」 「…………」 引っかかるような言い方。 でも、研修前に嫌な気分になりたくなかったからぼくは知らないふりをした。

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