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第103話

はるか先生のお母さん同様、世界で活躍されていらっしゃるピアニストの浅水(あさみず)さんの演奏と指導を受けられた研修は、ぼくにとってとても実りあるものだった。 『あなたの強みはピアノを愛しているという気持ちがこもった優しい演奏よ。自分の演奏を弾く時、海をイメージして弾くといいと思うわ』 どこまでも続く、静かな海。 時に波飛沫をあげ、荒れ狂う事もあるけれど、多くの命を育み、恵みをもたらす海。 ぼくの演奏はそんなイメージだと、浅水さんに言われた。 「あのオバサン、お前の演奏が一番好きだったんじゃね?あの人の演奏の雰囲気とお前のピアノ、近い感じだし」 研修を終え、浅水さんの演奏が始まる前に浩が言ってくれる。 「そんな事ないよ。ぼくはまだまだ下手くそだってば」 園にいると、上手い先生方ばかりだから余計にそう思ってしまってた。 「最初に比べたら、上手くなってると思うけどな……」 会場が暗くなり、演奏が始まる。 「……え……っ……」 それからすぐ、浩の手がぼくの大股に伸びて、内側を撫でてきた。 「ひ……浩……」 「……誰も見てねぇって……」 ホールで行われている演奏。 ぼくらは後列の、周りに人がいない席に座っていた。 「ど…どうして…」 「うるせぇな、黙ってろよ」 「うぅ……っ……!!」 耳元で囁かれて、時折首筋を舐められながらパンツ越しに股間を握られる。 「やぁ……んん……っ……」 「もう少し声の音量下げねーとバレちまうぞ」 「も…やめてよ……っ……」 浩の手はぼくのベルトを掴んでいた。 「……トイレ行くか……」 けど、その手はベルトから離れるとぼくの腕を掴み、会場の外のトイレへとぼくを引っ張っていったんだ。

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