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第106話
「げっ、人身事故で電車止まってるって」
ピアノ演奏は大成功ですごく楽しかったけど、終わって改札口に向かうと、電光掲示板にぼくらの乗る電車が人身事故で一時運休している情報が書かれていた。
「どうしよう……」
「2時間は動かねーだろうな。どこかで時間潰すか」
「うん……」
悠太郎、大丈夫かな。
このままじゃ帰る頃には眠たくてぐずったりするかもしれない。
ぼくは不安になりながら事情を話すため、はるか先生に電話をかけていた。
『お、もも。どーした?』
「あ、あの……」
電車の事を話し、悠太郎の様子を聞く。
『マジか、そりゃ大変だな。こっちは問題ねぇから気をつけて帰って来いよ。悠太郎、動物園でめちゃくちゃはしゃいできたからか今メシ食いながら寝そうだし』
「そう……ですか……」
悠太郎、ぼくがいなくても楽しく過ごせたんだ。
嬉しいような、ちょっと寂しいような。
電話を切ると、ぼくはため息をついてしまっていた。
「悠太郎、大丈夫そう?」
そんなぼくを見て笑う浩。
「うん……」
「……じゃあ、お前もお前の時間を楽しめばイイじゃん」
「え……っ!?」
突然、浩がぼくの手をひいて歩きだす。
「ちょっ、ちょっと、どこ行くの?」
駅を出て、大きい通りから1本裏の道を入っていく浩。
その道は歓楽街で、怪しいお店もあった。
浩が足を止めたのは、『サービスタイム120分2900円』と書かれた看板が置いてある、オシャレな白い建物の前だった。
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