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第111話

「絶対こっちだって」 「嫌だよ、悠太郎とお揃いみたいに着たいからこっちにする」 「はぁ?お前、金払って買うんだからちゃんと考えて自分に似合うの選べよ!!」 8月に入ってしばらく過ぎてから、ようやく夏休みが訪れた。 ぼくの予定は母に来てもらって数日過ごす事、花火大会に行く事、オンラインライブに参加する事になっていた。 母とは一緒に動物園に行ったり、料理を作ってもらったりして過ごし、悠太郎もすごく楽しい日々だったみたいで別れ際は母と離れたくないと言って泣いてしまい、母も泣く泣く帰っていった。 今日は花火大会とオンラインライブで着る浴衣を買いに悠太郎と浩とショッピングモールに来ていて、この後はるき先生に浴衣の着方を教わる事になっていた。 先に悠太郎が選んだ、紺色で七宝紋という形が総柄になっている甚平に合わせてぼくも無地の紺色の浴衣を買おうとしてるんだけど、浩が白地に紺のストライプの方が似合うってうるさくてお店の前で揉めていた。 「悠太郎、どっちがパパに似合うと思う?」 お互いに譲らないので、ぼくは悠太郎に聞いてみた。 「パパはね、これ!!」 悠太郎が選んだのはぼくのでも浩のでもなく、紺色で絣という種類の生地の浴衣だった。 「うん、じゃあこれにする」 「何だよ、悠太郎!パパと同じ色がいいのかよ!!」 「うん!!」 悠太郎が選んでくれたんだから間違いない。 浩も諦めてくれて、ぼくはようやく浴衣を手に入れる事が出来た。

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