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第112話
ショッピングモールのフードコートでお昼ご飯を食べた後、ぼくらは、はると先生のお宅に向かった。
「うちだと狭いので……」
「よ、よろしくお願い致します……」
はるき先生にそう言われ、ぼくは頭を下げる。
先生、ぼくが本当の事を知っているのを知らないみたいだ。
「悠太郎、パパがお勉強してる間、俺たちとサッカーして遊ぼうぜ」
「うん!」
はるか先生は悠太郎とはると先生と浩を連れて外に行ってしまう。
どうしよう、はるき先生とふたりきり。
ちょっと怖いかも。
「……あぁ、セットで買ってきたんですね。それならもし分からなくなっても説明書を見たら思い出すと思います」
「は、はぁ……」
買ってきたばかりの浴衣を紙袋から出して見せると、それを見ながらこう話すはるき先生。
「まずは僕が見本を見せますので、着ているところを動画で撮影して下さい」
「はい、ありがとうございます……」
はるき先生に言われて、ぼくは先生が用意していた浴衣を着るところを動画撮影する。
先生が身につけていた紺色のTシャツとグレーのハーフパンツをいきなり脱いで下着姿になった時はすごくびっくりしたけど、先生はそんなぼくには気づいていないみたいだ。
「……こんな感じですね」
ぼくに合わせてゆっくり着てくれたと思うんだけど、それでも僕には難しそうに見える。
ベージュに縞模様の入った浴衣を着たはるき先生はいつもより少し柔らかい印象で、すごく似合っているなぁって思った。
「もも先生、やってみましょうか」
「あ、はい……」
はるき先生に促され、ぼくは浴衣に着替える為に履いていた黒のクロップドパンツを脱ぐ。
「………!!」
それで、ぼくは気づいてしまう。
先週、浩がうちに来てセックスした時に脚の付け根につけられたキスマークがまだ残っていた事を。
どうしよう、はるき先生、気づいたかな。
「……こちらが上です……」
一瞬、脚の方を見られた気がしたけど、気のせいであって欲しい。
「そうですね、初めてにしては出来ていると思います」
教えていただきながら、何とか浴衣を着る事が出来たぼく。
「あ、ありがとうございます。はるき先生、浴衣をひとりで着られるなんてすごいですね」
ぼくがそう言うと、はるき先生の眉がぴくりと動いた気がした。
「……僕の実家がよく浴衣を着る家だったので……」
それ以上は触れないで欲しい、という雰囲気を漂わせているように見えたはるき先生が、ぼくはやっぱり怖いと思ってしまった。
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