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第117話

『こんにちは、チームHARUです。閲覧ありがとうございます!今回はなんと、『Forest』社長の杜明日南さんのご支援を頂き、こちらのホールから『懐かしい日本の歌』というテーマでお届け致します』 浴衣にパンダの被り物をして話しているはると先生は、杜さんの協力で声が変えられるピンマイクを使って違う声になって話していた。 『まずは僕ら3人、『春の海』をオープニングとして弾かせて頂きます』 そう言って、はると先生は先にピアノの前に座っていたはるか先生とはるき先生に続いて右端に着席し手を繋いだ後、宮城道雄の『春の海』を3人で弾いた。 本当は琴で奏でるメロディをピアノで奏でる先生方。 一糸乱れぬ細かい指の動きは流石としか言い様がなく、途中で席を変えるパフォーマンスまでして、鳥肌が立つくらい素晴らしい演奏だった。 『ありがとうございます。コメント欄にお正月というワードがたくさん出ていますね。次の曲もお正月を思い起こさせる曲です』 はると先生のアナウンスの後、舞台袖で出番を待つぼくと浩のところに、はるか先生とはると先生が来て、パンダの被り物を脱ぐ。 次ははるき先生だけが弾く事になっていて、滝廉太郎の曲をはるき先生、はると先生、はるか先生の順番で弾く事になっていた。 杜さんが選曲した曲。 はるき先生の『お正月』、はると先生の『花』、そしてはるか先生の『荒城の月』。 はるか先生がスローテンポの曲を弾くのを初めて聴いたけど、その技術の高さはプロのピアニストと変わらないとぼくは思った。 「春楓の演奏、ヤバすぎだろ」 ぼくの横に座っている浩が言う。 「うん……」 目の前に情景が浮かんでくるような、切ない音色。 普段のはるか先生からは想像もつかないメロディだった。 「春楓、昔はゆっくりした曲をあんまり弾きたがらなかったけど、音楽活動をするようになってから弾く機会が増えて、その表現する世界は唯一無二だと思う」 「……でも、春楓的には結構ストレスみたいだよね。弾き終わってから必ず速い曲弾こうって言ってくるから」 はるき先生とはると先生が嬉しそうに話す。 こんなすごい演奏の後に弾くなんて。 そう思ったけど、それは弾く順番を聞いた時に分かっていた事だ。 ぼくはぼくの出来る精一杯でピアノを弾くだけ。 はるか先生の演奏が終わると、ぼくは深呼吸し、茶色い馬の被り物をして、パンダの被り物を被ったはると先生と一緒にステージに上がったんだ。

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