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第120話

『夏、秋と季節をイメージしたというコメントをたくさん頂きありがとうございます。次は前回に引き続き登場の白馬くんが『浜辺の歌』を弾きます』 浩の演奏が始まる。 園のホールで聴いた時は浩の力強い感じが出た明るいイメージだったけど、この曲の歌詞自体は少し切ない感じだからその違いがどうなのかなって思っていた。 でも、今日の浩の演奏は、自分の事……記憶を無くした自分をイメージしてるのかな、って勝手に思ったんだ。 浜辺で倒れていた自分が一体誰なのか。 思い出そうとしても思い出せない。 ぼくには興味ない、って言ってたけど、今日のピアノを聴いたら本当は知りたい、けれど忘れたいような過去だったら……と葛藤しているように聴こえたんだ。 『白馬くん、力強い中に歌詞の切なさを上手く表現していたと思いました。感動で涙が止まらない、というコメントが届いていますね、ありがとうございます……』 はると先生がお話している間に浩が戻ってきてはるか先生と入れ替わる。 「お疲れ!お前もあんな風に弾けるんだな」 「うるせーな!最後しくじんなよ、春楓!!」 「おう!!」 ハイタッチを交わすふたり。 「浩、お疲れ様」 浩がしてくれたように、ぼくも浩にお水の入ったペットボトルを渡す。 「お、サンキュー。やっぱ被り物ってあっちぃよな」 馬の被り物を脱ぐと、浩は水を一気飲みし、タオルで頭や顔を拭いた。 「さーて、あと1曲か。声出ししねーと」 はるか先生が岡野貞一の『朧月夜』を弾いた後、アンコールという事で杜さんから合唱をして欲しいと頼まれていたぼくら。 歌うのは、はるか先生たちが高校生の時に歌ったという、思い出の曲だった。

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