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第121話
「アンコールに明日南からこの曲で合唱やってって頼まれたから、悪いけど協力してくんねーか?」
そう言われたのは、コンサートのプログラムが決まってすぐの事だった。
杜さんから、はるか先生が指揮、はるき先生が伴奏で合唱をやって欲しいと要請があり、はると先生、浩、ぼくが歌う事になった。
「オレは別にいいけど」
「ぼ、ぼくも大丈夫です……」
「サンキュー!めっちゃ助かる!!」
人前で歌うのは恥ずかしいけど歌う事は嫌いじゃなかった。
はると先生が主線になり、ぼくと浩がコーラスになって幼稚園のホールやはると先生のお宅で練習を重ねた。
はると先生のキレイで張りのあるよく響く声に上手く合わせられるように頑張ってきて、はると先生から褒められた時はすごく嬉しかった。
「こうやって練習していると、あの頃を思い出すね……」
「ん?ワケありに見えるけど、何かあったのか?」
そう話したはると先生の複雑な表情から、浩が言った。
「……今回、春楓が指揮で春希が伴奏だけど、あの時はアクシデントがあって急遽春楓と春希が役割を交代したんだ。合唱コンクールまで1週間っていう時だったけど、3人で力を合わせて乗り越えた。最優秀賞は取れなかったけど、その次にいい賞を頂けて、すごくいい思い出だよ」
「へー。春楓が指揮って小さくて見ずらそうだから春希で良かったんじゃね?」
「おい、浩、今何つった?音程たまにズレてるクセによくそんな事言えるなぁ?」
はると先生の雰囲気から一転、浩の一言でいつもの明るい雰囲気が戻ってくる。
「明日南、あの頃の僕らの本来の役割での合唱を見たいって思ってくれたっていう事だと思うから、それに応えるのが僕らの仕事だと思う」
はるき先生がそう言うと、はるか先生とはると先生は頷いた。
「巻き込んじまって悪いけど、お前ら頼むわ」
「しゃーねーな。春楓、お礼はビール1ケースでいいから」
「はぁ!?誰が買うか!!」
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