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第123話
『以上で本日の配信を終了させていただきます。杜さんには次回開催予定のチャリティーコンサートにもご協力頂く事になっていますので、詳細が決まり次第またご案内させていただきます。ありがとうございました……』
ピンマイクを取りに戻ったはると先生が言い、動画撮影のカメラが止まる。
「はるかー!!」
そこに、杜さんが客席から泣きながら走ってきて、はるか先生に抱きついてくる。
「もう、Speechless!最高としか言い様がないよ!!Amazing!!」
「分かった、分かったからくっつくなよ、暑苦しいって!!」
「そうだよ、明日南。春楓が困ってるんだからやめなよ」
「感動し過ぎじゃない?お子さんに笑われてるよ」
興奮状態の杜さんに、はると先生とはるき先生の目線はとても冷たく見えた。
「パパー!!すごくかっこよかったよ!!」
「悠太郎!!」
悠太郎もはるみくんと手を繋いでステージまで走ってくると、ぼくに笑顔を見せてくれる。
「ふたりとも、長い時間だったのにずっと黙って見られるなんて偉かったよ。カッコイイお兄ちゃんだったね」
その頭を撫でると、悠太郎もはるみくんも嬉しそうにしてくれた。
「……おい、これ大丈夫か……?」
パソコンの画面を見ていた浩がはると先生に声をかける。
「……あぁ、やっぱりそうなっちゃうよね。予想はしてたけど……」
画面を見せてもらうと、
『子パンダの指揮、キジケンそっくり過ぎない?』
『キジケンのファン?』
『キジケンって息子いたよね。テレビ出ててスゲーピアノが上手かった記憶がある』
というコメントが書かれていた。
キジケン……はるか先生のお父さんの事だ。
「春楓の指揮、すごく良かったけどおじさんに似てたからね。気づかれてもおかしくないと思う」
そう言いながら、はるき先生はスマホを動かしていた。
『大学同じゼミだったけど、今は海外にいるよ。向こうで音楽活動するって言ってた』
『じゃあ子パンダはキジケンのモノマネしてるだけか』
はるき先生、コメントを書いて上手く話題を逸らしたみたいだ。
「親父ソックリか〜、もう少し控えめに指揮すれば良かったかな……」
「そしたらお前チビなんだから見えねーだろ」
「あぁ?浩、もう一度言ってみろコノヤロー!!」
浩の言葉に、はるか先生がその脚を踏んずける。
「痛ってー!!冗談だったのにここまでする事ねーだろ!!」
浩とはるか先生の小競り合いは、この後もしばらく続いていた。
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