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第127話
開会式の後、かけっこが始まった。
年少さんはピストルの音でびっくりして泣いてしまう子もいたけど、みんな最後まで諦めずに走りきる事ができた。
うちの悠太郎は1番最初に走ったけど、ぼくの練習にずっと付き合っていたからか、1番先にゴールしていた。
「ゆうたろうくん、走り方が違ってたわよね」
「もも先生も速いのかしら」
お手伝いのお母さん方のひそひそ話が耳に入り、ぼくは再びどうしようという気持ちになる。
かけっこの後、みんなで力を合わせて頑張ってきたマーチングが披露され、全学年心をひとつに素晴らしい演技を見せてくれた。
ぼくは悠太郎はもちろん、子供たちの頑張りに感動して泣いてしまい、はると先生にティッシュの箱を渡された。
「す、すみません……」
「いいえ、僕も毎年とても感動させられます。あんなに小さい子たちが一生懸命頑張っている姿、本当に素晴らしいですよね。保護者の方は毎年泣かれる方が多いですよ。ほら……」
はると先生は保護者がいる2階の観客席の方に視線を移す。
そこにはぼくのように泣いている方がたくさん見られた。
「もも、涙腺弱いんだな」
そう言ってぼくの頭を撫でてくれたはるか先生の目も、少し潤んでいた。
「ふふっ、春楓もね」
「お、俺は年長の担任だから仕方ねーだろ」
「……まぁ、そういう事にしようか」
はるか先生の涙ぐむ姿に、はると先生は目を細めている。
「今年も無事に終わる事が出来て良かったです。完璧に出来なかったら悔いが残りますから」
そう話すはると先生に、ぼくはマーチングが園として必ず成功させなければならない行事だという事に気づいたんだ。
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