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第138話

「今日のお前、スゲー可愛いからもっかいヤらせて」 浩がそう言ってきたから、ぼくは少しでも浩と一緒にいたくて家に泊まるならいいよって答えていた。 「分かった。帰って仕事したいから、午前中のうちに帰っていいか?」 「うん、ありがとう……」 リビングに母親が来た時の為に買った布団を敷くと、ぼくらはその上で再び求め合い、そのまま眠ってしまっていた。 どのくらい眠ったのか分からないけど、ぼくは浩がうなされている声で目が覚めていた。 「浩……」 苦しそうな顔。 ぼくがその身体を揺すると、浩はうーんと唸ってから、 「わたる……」 と誰かの名前を呼んだ。 「渉、ごめんな、兄ちゃん、今……お前の所に逝くからな……」 浩の目から涙が溢れていく。 逝く? 死んじゃうって事? ぼくはパニックになった。 「ホントはお前と生きたかった、お前に生きてて欲しかった。なのにどうして……どうして……」 ボロボロと涙を零しながら話す浩を起こさなきゃと思ったぼくは必死でその身体を揺さぶった。 「浩、起きて、起きてよ!!」 「う……っ、何だよ、うるせーな」 それで浩は目を覚ましてくれる。 「ご、ごめん、なんか……悪い夢見てる感じだったから起こしちゃった……」 「ん?そうなのか?悪い、全然覚えてねーわ……」 浩は頭を掻きながら目元に溢れている涙を拭っていた。 「はぁ、また泣いてる。たまにあんだよな、起きたら泣いてるって事……」 「……そう……なんだ……」 あんなにハッキリ名前を呼んでいたのに覚えていないなんて。 信じられなかったけど、怖くて聞けなかった。 「オレ、過去に何かあったんだろうな。……どーでもいいけど」 そう言って、浩はまた眠ってしまった。 「…………」 言わなきゃ。 はるき先生に伝えなきゃ。 翌日。 浩が帰った後、ぼくは震えた手ではるき先生に連絡していた。 『浩の事ですが、覚悟できました』 そうメッセージするのが精一杯だった。

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