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第139話
『悠太郎くんが眠ったら3人で伺いますので、眠り次第連絡ください』
はるき先生からそんなメッセージを頂いたので、ぼくは悠太郎を寝かしつけると先生に連絡していた。
「大丈夫か?顔色悪いけど」
「大丈夫です、ちょっと眠れなかっただけなので……」
はるか先生とはると先生が心配そうな顔をしてぼくを見ている。
ぼくは何とか普通に振る舞おうとしていた。
「……浩と何かあったんですか?」
はると先生に言われて、ぼくはゆっくりと頷いた。
「浩が……昨日初めてうちに泊まったんですけど……」
先生方に話しているうちに、ぼくは浩の様子を思い出し、泣いてしまっていた。
そんなぼくを、はるか先生が優しく抱き締めてくれる。
「……ありがとな、もも。あいつの為に泣いてくれて」
「はるか先生……」
涙を拭いてくれるその手は、すごくあたたかかった。
「もも先生、割と核心に迫るような言葉を聞いてしまったんですね……」
そう言って、はると先生がスマホの画面を見せてくれた。
新聞記事らしい画像。
『海中に転落、無理心中か』
という見出しと、
『家族3人死亡確認。残る1人を捜索中』
という文字が太字で記事の先頭らしい場所に書かれていて、ぼくは身体から血の気が引いていくのを感じた。
「この、残る1人が浩です」
「…………!!」
はると先生の言葉にぼくは、はるか先生の腕を強く掴んでしまっていた。
「ご、ごめんなさい……」
「大丈夫だから気にすんな」
はるか先生はいつもの笑顔で笑いかけてくれる。
それから、はると先生は自営業だった浩の家が事業に失敗した事で一家で無理心中をし、浩だけが生き残った事を話してくれた。
「渉くんは浩の弟で先天性心疾患を患っていたそうです。手術すれば治る可能性が高かったらしいんですが、浩の家にはそんな余裕などなかった様です。そうした事も浩のご両親を心中という悲しい結末に導いてしまい、それだけでも浩には辛すぎると思って話さずにいるんですが……」
はると先生が苦い表情を浮かべて何かを言い淀む。
「春翔」
「……ごめん、この話をしていいのかなって思って……」
「じゃあ僕から話すよ。あくまで可能性の話だけど、もも先生は知っておいた方がいいと思う」
「でも……」
悩んでいるはると先生に対して、はるき先生はいつもの淡々とした様子だ。
はると先生が話すのを躊躇うような辛い事が更にあるって事だよね、きっと。
「今後、僕らの時みたいに寝言で言い出すかもしれないじゃない。その時、もも先生が知らなかったらどうしていいか分からなくならない?」
「そうだけど……」
「あ、あの……話してください。浩の事全部受け止めるって決めたから、知りたいです」
これ以上辛い事なのかもしれないって思いながらも、ぼくは自分が決めた覚悟を胸に先生方に向かって言った。
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