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第144話

呆然としているぼくのところに、浩から電話がかかってきた。 「ヨースケ!今どこだ?」 「あ、浩、どうしよう、悠太郎が、悠太郎が……」 「落ち着けって!!今行ってやるから居場所教えろ!!」 浩に言われて、ぼくは今いるホールの事を話していた。 「分かった、すぐ行くからそこ動くなよ。いいな?」 「う、うん……」 ぼくはロビーで浩が来るのを待った。 ずっと会場に戻って来ないぼくを心配したのか、母親もロビーに来てくれた。 悠太郎がいなくなった事を伝えると、母親の顔は真っ青になっていく。 そこに、浩が来てくれた。 「ヨースケ!」 「浩、どうしよう、どうしたら……」 「大丈夫だ、春楓たちがケーサツにツテあるみたいで探してくれてるし、杜さんも会社が市内の防犯カメラの設置に関わってるらしいからそこから行方を探してくれてる。悠太郎は絶対見つかるから」 震えが止まらないぼくを、浩はそう言って抱き締めてくれた。 「あ、あの……」 母親がそんな浩を見て声をかける。 「あっ、すみません。オレ、陽輔くんの同僚の紺野という者です。悠太郎くん、必ず見つけますのでお母さんは一度お宅に戻られる事にしてもよろしいでしょうか?」 「え、えぇ……」 パニックになっているぼくに代わって、冷静に対応してくれる浩。 母とぼくを自分の車に載せ、実家まで送り届けてくれると、浩はぼくにビンタしてきた。 「親のお前がしっかりしねーでどうすんだよ!!」 ぼくはビンタされた痛みと、浩に言われた言葉が胸に突き刺さり、泣いてしまっていた。 「そうだよね、そうだよね。悠太郎の方が怖い思いをしてるかもしれないのに、ぼくがこんなんじゃダメだよね……」 「分かってんなら早く泣き止めよ。お前が泣いていいのは感動した時と気持ち良すぎる時だけだ」 そう言って、浩はぼくの涙を拭ってキスしてくれた。 「……何それ、気持ち良すぎる時って」 「お前、セックスしてる時たまに善がって泣いてんじゃん」 ぼくのおでこに自分のをくっつけてくると、浩は笑いながら言ってきた。 「こんな時にそんな話しないでよ」 分かってる。 浩がわざとこんな話をしてぼくを落ち着かせようとしてるのを。 そんな浩が、ぼくは大好きだ。 「……てかさ、お前一番身近なトコ見落としてね?」 「えっ!?」 「お前の元嫁だよ。可能性ゼロじゃねぇだろ」 「そ、そうかな……」 僕らを邪魔だと言っていたという妻が、今更悠太郎に近づく必要なんてあるんだろうか。 「気まずいって思うかもしれねーけど、元嫁とその実家には連絡先知ってるならかけてみた方がいいって」 「ん……分かった……」 もう2度と話したくないって思ってたけど、仕方ない。 ぼくはまず妻に電話をかけてみた。 けれど、今は使われていないというアナウンスが入り、辛うじて連絡先に残していた妻の実家にかけてみたら今どこでどうしているか全く分からないと言われてしまった。 「んー、五分五分かな。電話は着拒してる可能性もあるし、実家に頼んで口裏合わせて匿ってもらってるかもしんねーよな。もしくは実家に逃げ込めねーから悠太郎連れてどこかに留まってるとか……」 浩に報告すると、そんな言葉が返ってきた。 「とりあえず元嫁の実家見に行って……ん?春楓から電話だ。ちょっと出るから」 「うん……」 はるか先生からの電話。 何か手がかりが見つかったのかな。 「えっ、マジで!?スゲーな。あぁ分かった、とりあえずヨースケ連れてそこ行って来るから。もし何かあったら連絡する。じゃ」 浩は電話を切ると、ぼくを見て笑った。 「悠太郎、見つかったって。とりあえず向かうぞ」

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