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第146話
「あ〜、ちょっとすいませ〜ん」
「浩……」
そこに、ぼくの後ろにいた浩が割って入ってくる。
「な……あんた一体誰なの!?」
「はじめまして〜、オレ、ヨースケの彼氏のヒロって言いま〜す!ヨースケ、あんたに捨てられてもう女は無理ってなって、今はオレにケツ掘られてスゲー悦んでるんでやり直すなんて絶対無理ですよ〜」
ぼくの肩を抱き、浩は笑顔を浮かべながらいつもより少し高めの声色で挑発的に言った。
彼氏じゃなくてセフレなのに。
この人に諦めさせるために彼氏って言ってくれたのかな。
「はぁ!?何をふざけた事……」
「ふざけてなんかいねーよ。そうだ、悠太郎も寝てるから証拠見せてやるよ」
「ちょっ……ひろ……っ……!」
浩は急に真面目な顔になって、その人の前で大胆にもぼくを抱き締めてキスしてきた。
「や……んんっ……!!」
何度も触れては離れるキスの後で舌を入れられて、ぼくはその心地良さに応えてしまっていた。
「う……嘘……陽ちゃん……なんでこんな……」
そんな声が聞こえたような気もしたけど、ぼくにはそれよりも抱き合ってる事で分かる浩の昂りが愛おしくて、つい自分のをソコに擦り付けてしまっていた。
「ハハ……ッ、ヨースケ、そんなヤラシイ腰の動き、悠太郎が起きたらどーすんだよ」
「あぁ……っ、でも……」
見られて恥ずかしいはずなのに、今のぼくは妻だった人に見せつけたいって思ってしまった。
ぼくは片想いだけど大好きな人にこんなにも愛されて、今すごく幸せだって伝えたくなってしまったんだ。
「んなエロくて可愛い顔、そこのクソアマに見せんなよ、もったいねーだろ。後でたっぷり可愛がってやるからそれまで我慢しろって」
浩がぼくの頭をポンポンしながらすごく嬉しそうに言う。
「……って事だから、とっとと実家にでも帰れば?あんた、どうせ不倫した男に捨てられたからヨースケの所に戻ろうとしたんだろうけど、そうはいかねーよ。悠太郎もオレに懐いてるからさ、あんたなんかいなくて全然問題ねーんだよ。これ以上ヨースケや悠太郎を傷つけるんならオレ……あんたの事、殺すよ?」
「ひぃ……っ!!」
そう言って、浩は高く蹴りあげた脚をその人の目の前で止めてニヤリと笑った。
その冷たい笑顔は今にもこの人を殺してしまいそうにも見えて、ぼくはものすごく怖くなった。
「んじゃ、そーゆー事で。ヨースケ、行くぞ」
「あ、うん……」
腰を抜かして動けなくなっているらしい妻だった人を横目に、ぼくは悠太郎を抱き上げるとその場を後にしようとした。
けど、どうしても一言だけ言いたくて、つい話してしまっていた。
「……さようなら、凪子さん。ぼくは悠太郎と……浩と3人で幸せになるから、凪子さんも良い人を見つけて幸せになって下さいね。あと……ぼくと悠太郎の前に二度と現れないで」
それだけ言ったら胸がスっとして、すごく晴れやかな気持ちになったんだ。
そして、ぼくは思った。
浩にぼくのこの気持ちを……セフレじゃなくて恋人になって下さいって伝えようって。
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