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第147話

カラオケ店の人にお金を支払うと、ぼくは母親に悠太郎が見つかった連絡をし、浩の車でホールまで送ってもらい、駐車場に停めていた車で帰宅していた。 悠太郎は見た目には怪我をしてる感じではなかったけど、ぼくは心に傷がついたんじゃないかと不安でならなかった。 「とりあえず春楓たちには無事見つかったって話はしといたけど、あの女、悠太郎になんて言って連れ回してたんだろうな……」 浩が心配して、車を自宅に置いてから来てくれた。 「何から何までありがとう。うん、あの人が悠太郎に母親って名乗ったのか気になるよ……」 その可愛い寝顔を眺めながら、ぼくは悠太郎の頭を撫でていた。 「ん……パパ……?」 「悠太郎……!!」 ゆっくりと目を開ける悠太郎を堪らず抱き締める。 「ごめん、ごめんね、すごく怖かったよね?」 「うん、ちょっとだけ。しらないおばさんがきょうからパパと3にんでいっしょにくらそうっていうから、ぼくはいやだっていってないちゃった」 「……そっかぁ、よく頑張ったね、悠太郎……」 涙が止まらなくて、ぼくは悠太郎を抱き締めながらずっと泣いてしまっていた。 妻の事、知らない人だと思ってたんだ。 あれが実の母親だって分からなくて良かった。 「あ、ひろせんせい。パパのおたんじょうびだからうちにきたの?」 「ん、まぁそれもあるけど、悠太郎がいなくなったってパパが大騒ぎしてたから探すの手伝ったんだ」 「せんせい、パパのbest friendだもんね」 「……あぁ、そうだな。悠太郎もだぞ?」 そう言って、浩が笑顔の悠太郎に笑顔で応えてそのほっぺたにキスをしてくれる。 「ぼくもせんせいのbest friend?やったぁ!でも、ぼくのいちばんのbest friendは、はるみくんだよ!!」 「ハハッ、知ってるよ。パパじゃなくて春海と一緒にピアノ弾きたいんだってな」 「うん!つぎのはっぴょうかい、ぜったいはるみくんといっしょにピアノひきたい!!」 不安は残るけど、愛らしい笑顔の悠太郎に、ぼくは安心した。

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