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第148話

それから。 浩が悠太郎に頑張ったご褒美と言って大好きなクマの形をしたハンバーグ付きのカレーを作ってくれた。 「せんせい、パパにおたんじょうびプレゼントないの?」 「こ、こら、悠太郎。そんな事言っちゃダメなんだよ」 「んー、あるけど、まずパパだけに見せたいからなぁ……あ、オレ今日悠太郎の家にお泊まりさせてもらうから、悠太郎には明日見せてやる」 「えっ……!?」 家に泊まる? 浩から突然そんな事を言われて、ぼくはドキッとしてしまう。 「わーい!!ひろせんせい、ぼくといっしょにねようね」 「おう」 目が合うと、浩はぼくに不敵な笑みを浮かべていた。 悠太郎を寝かしつけてくれた浩。 ぼくはその間に食器を片付けていた。 ……そういえば。 どうしてあの人はぼくらが今日ピアノの発表会だって知ってたんだろう。 知らないうちに調べられていたのかな。 「悠太郎寝たぞ」 そこに浩がやって来る。 「あ、ありがとう……」 ぼくはポットでお湯を沸かしてふたり分のコーヒーを用意した。 それを飲みながら、ソファに座って話をする。 「……あの女、どうやらお前と悠太郎の事、結構前から探してたらしい」 「えっ、そうなの?」 「悠太郎寝かしてる間に春翔からメッセージが来てたんだけどさ、オレらが帰った後で春楓たちがあそこに行ってあの女をとっ捕まえて色々話を聞いたらしい」 「……そうなんだ……」 先生方に迷惑かけちゃったな。 後でお詫びの電話しなきゃ。 「で、不倫相手と別れてるかと思ったけどどうやらそうじゃなくて、慰謝料払わされたからその金を稼ぐようにこき使われてるらしい。探偵雇ってお前の居場所を突き止めて悠太郎を連れて行ったのもお前から金を取るつもりだったらしいけど、あの女は今の生活から抜け出したくてお前とヨリ戻そうとしたってさ」 「……じゃあぼくの家の場所とか分かってるって事?」 「あぁ、でも春希が今回の事を裁判や警察沙汰にしない代わりに二度と近づかないっていう念書書かせたから大丈夫だろうって。でも心配ならここから違う家に引っ越せるように手配するってオヤジも言ってるらしいから、お前がどうしたいか次第だ」 「……そっかぁ……」 このままここにいたら皆さんに迷惑をかけ続けちゃうよね。 でも、ぼくには他に行くあてもないし、悠太郎だって今すごく楽しく過ごしてると思うし……。 それに………ぼくはこのまま浩と一緒にいたい。 「あのさ……」 ぼくが俯いていると、隣に座っていた浩がぼくの手を握ってきた。 「……オレと一緒に暮らさねーか?」 「えっ」 真面目な顔をした浩。 ぼくはそんな浩から目が離せなかった。 「好きなんだ、お前が」 そう言って、浩はぼくを抱き締めてくる。 「最初はそんなつもり全然なかった。ちょっとしたら飽きるかもって思ってたし。けど、いつの間にかお前のコトほっとけねーって思うようになってて……オレだけのモノにしたくなってた……」 触れる浩の頬が熱い。 ぼくもつられて同じようになってたし、浩の言葉で涙まで出てきた。 嬉しい。 さっき、妻だった人の前で言ってくれた事もしてくれた事も全部、浩のホントの気持ちがあっての事だったなんて。 すごく、すごく嬉しい。 「悠太郎の事もお前の事もちゃんと幸せにするって約束する。だからオレの傍にずっといてくれねーか、ヨースケ」 「……ありがとう、浩。ぼくも君の事が好き、大好きだよ」 めちゃくちゃ涙声になっちゃったけど、ぼくはようやく浩に自分の気持ちを伝えられた。

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