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Candy&Drop(2)

「てめえが四天の北条か――?」  それは新学期の番格対決が終わったばかりの、とある放課後のことだ。一人、帰路についていた北条秋夜の目の前に、いきなり現れたふてぶてしい集団。彼らは川を隔てた隣町にある川東高校(かわとうこうこう)の学生たちだった。  青色のブレザーを着崩し、髪は派手なカラーリングやブリーチで弄り放題――見るからにガラの悪いメンツ揃いである。そんな男たちが七、八人で徒党を組み、顎を突き出して秋夜の行く手を塞ぎに掛かってきたのだ。 「てめえ、四天じゃ今年の頭だなんだと言われてるらしいが、あんま調子コイてんじゃねえぞ!」 「つかよ、桃陵の源とタイマン張ってのめしたって話だけど、ホントかよ」 「正直、信じらんねえよなぁ。相手は”斉天大聖”と言われたあの源だぜ? ガセじゃねえのか?」 「よっぽどツイてたか、それとも姑息な手段でまぐれ勝ちしたってだけじゃね?」  ニヤニヤとせせら笑いながらにじり寄られ――秋夜はあっという間に彼らに周りを囲まれてしまった。 「なぁ、どうなんだって!」 「黙ってねえで何とか言えってのよ!」  罵倒と共に頭を小突かれそうになり、咄嗟に学生鞄でその手を振り払った。 「……ッにしやがる、てめえ!」 「ナメてんじゃねえぞ、ぐぉらッ!」  いわば多勢に無勢だ。気が大きくなっているわけか、川東の学生らは大袈裟に肩を鳴らして凄み掛かった。だが、秋夜は尻込むわけでもなく、かといって凄み返すでもなく、うっとうしいとばかりに冷淡とも思えるような視線で彼らを一瞥した。そして、無言のままそこを退けとばかりに歩き出す。――が、今度はいきなり胸倉を掴み上げられ、 「シカトこいてんじゃねえよ、このクソがッ! 何ならここで畳んでやってもいんだぜ!?」  そのまま後方へと突き飛ばされた。 「何せあの斉天大聖を倒したってんだからよ! てめえ、強えんだろ?」  斉天大聖というのは、言わずもがな番格勝負で対戦相手だった桃陵学園の源真夏のことだ。彼は桃陵のみならず周辺高校の不良連中からも腕の達つことで名を馳せているのは事実で、そんな大層な通り名が広く定着しているのだ。無論、秋夜ら四天の仲間内でも真夏の噂は周知のことだった。だが、秋夜とてその真夏に引けを取らない実力を認められているのも本当のところで、だから番格勝負の行方は誰もが気に掛ける大催事であったことに違いはなかった。  その勝負で勝ちを手にしたのは秋夜の方だったわけだが、それが気に入らないのか、部外者であるにもかかわらず、こうして川東の不良連中が絡んできたというわけだ。

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