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Candy&Drop(4)

 後に残ったのは秋夜と真夏の二人きり――河川敷に掛かる鉄橋の側道は人影もまばらだ。まあ、川東の連中もこういった場所柄と知っていて秋夜に因縁を付けたわけだろう。 「大丈夫か?」  真夏が静かに口を開く。だが、秋夜の方は無言のままで彼にガンをくれた。 「何でてめえがここにいる――」 「鉄橋の上からお前らが見えた。何だか厄介な雰囲気だったから気になってな」 「――ふん、そんでわざわざ加勢に駆け付けたってか? ご苦労なこったな」  嫌味まじりで嘲笑するも、真夏の方はまるで気にしていないようだ。それどころか、怪我はないのかとばかり、真剣な顔付きで容態を気に掛けている。  そんな彼に、秋夜はまたひとたび苦笑を漏らすと、クイと顎先で『付いて来い』といったふうにして、更に人気のない鉄橋下へと誘った。  何故だろう、秋夜はこの源真夏という男を前にすると、訳もなくつっけんどんな態度に出てしまう。元々愛想のある方ではないが、輪を掛けて仏頂面になり突っ掛からずにはいられない気分が顔を出すのだ。  何故そんな気持ちにさせられるのか、ザワザワと心の奥底を掻き乱されるような不安感に苛まれる。単に因縁関係にある相手校の頭だからという以前に、彼を目にした途端に疼き出す奇妙な感情の原因を秋夜は自覚できずにいた。 「おい、北条――」  頭上には車の往来の轟音が響いていて、人の目も届かない。こんなところに連れて来て何のつもりだとばかりに真夏が眉根を寄せる。秋夜はそんな彼を振り返ると、面と向かいざま立ち止まった。 「……川東の奴らも言ってたが、実はそれを一番訊きたかったのは俺なんだよね」 「――何のことだ」 「こないだの番格勝負のことだ。てめえ、何だって俺に負けるようなマネしやがった……」  そう――復活させたばかりの新学期の番格対決で、確かに秋夜はこの真夏に勝利した。勝利したのだが――秋夜にはそれがイカサマではないかと感じられていたのも事実だったのだ。 「俺の攻撃は全部空振りで、一発もお前に届かなかった。なのに……最後の一撃でお前は吹っ飛んだ。ノックアウト状態で……結果は俺の勝ちってことになったが、正直納得いかねんだよね」  つまりはこの真夏がわざと負けたのではないかと思えたわけだ。

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