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Candy&Drop(5)

「何であんなことしやがった? てめえ、俺をバカにしてんのかよ」  周りで見ていた者たちには分からなくても、対戦していた当人同士には身をもって優劣が体感できる。秋夜は拳を交えながら、この真夏には適わないと実感していたのだ。  それなのに結果はあっさり勝利となった。当然、納得のできるものではなかったわけだ。 「黙ってねえで何とか言えよ……! 何でわざわざ負けるようなマネしやがったのかって訊いてんだ!」 「勘違いするな。俺はわざと負けるなんてことはしねえ。油断したのが運の尽きってことだったんだろう」 「ふざけんなッ!」  秋夜はそう吐き捨てると、真夏の胸倉を掴み上げた。 「空々しい言い訳なんか聞きたかねえ!」 「言い訳なんぞじゃねえさ」 「……ッ! そうかよ……。だったら今ここで決着付けようぜ」 「……いきなり何だ」 「あン時の勝負のやり直しをしようって言ってんだ! このまんまじゃ俺は全然納得いかねえ。まぐれ勝ちしたなんてレッテル貼られんのも懲り懲りだ!」 「川東の奴らの言うことなんざ、気にするこたぁねえだろ」 「川東の奴らだけじゃねえよ! 誰が見てもそう思う。実際……俺自身がそう感じてんだからな……ッ」  掴んでいた胸倉を勢いよく突き放すと同時に、秋夜は利き手のストレートを繰り出した。――が、その拳は苦もなく真夏の掌に封じ込められてしまった。 「……ッ!? クソッ……」 「勝負をやり直してどうする気だ」  既に利き手のストレートを封じられた今の時点で、勝敗などついたようなものだ。だが、秋夜は最早コントロールのきかない感情に取り憑かれたように、暴れ足りないといった調子で目の前の男に食って掛かるしかできなかった。 「俺は……ッ、イカサマなんかじゃなく、ちゃんと勝負してえだけだ! そんで負けたなら素直に引き下がるさ! 一年間、てめえの言いなりにでも何でもなってやる……!」 「一旦ついた勝敗を覆そうってのか? 桃陵や四天の奴らにはどう言い訳するつもりだ?」 「は……! まるでてめえが勝つみてえな言い草じゃねっかよ! グダグダ言ってるヒマがあったら……本気で掛かって来いってのよ!」  秋夜は掴まれていた掌を振り切ると、間髪入れずに真夏へと殴り掛かった。だが、先日の番格勝負の時と同様に全ての攻撃がかわされてしまう。 「……ックソ! 避けてばっかいねえで……ッ、掛かって来いって……んだよッ!」  渾身の力を振り絞って体当たりせんとしたその時だった。繰り出した腕を取り上げられて、思い切りひねり上げられた。

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