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無自覚な恋情(7)
「……っと、俺ン番号は――」
秋夜が言う側から器用な仕草でそれを打ち込む。その指先は男らしく骨太感のあるものの、長くて綺麗な形をしている。今までは特に気に止めて見たことなどなかったが、美しいその指先に視線は釘付けにさせられてしまう。思わず咳き込みそうになるほど心拍数の速くなったその時、秋夜のスマートフォンに着信が届いた。
「それ、俺の番号だ。ちゃんと登録しとけよ?」
ニッと白い歯を見せて笑ったその表情が爽やか過ぎて、またもや咳き込みそうにさせられてしまった。
それからどのくらい歩いただろうか。あまりにもドキドキとしすぎたせいでか、気付けば既に四天学園の校門の前に着いていた。
「たまに架けさせてもらう。お前も……架けてくれたら嬉しい」
真夏はそう言うと、
「そんじゃ、また放課後にな!」
手を振りながら駆け出して行った。その後ろ姿を見送ったままの状態でぼうっと立ち尽くす秋夜の背を、登校してきた仲間たちがポンと叩いた。
「秋夜、はよ! もしか今のって斉天大聖じゃなかった?」
「なになに? まさか朝の迎えも始めたってか!?」
驚き顔の仲間に高鳴る気持ちを悟られまいと、秋夜は軽い咳払いと共に肩をすくめてみせた。
「……ったく……律儀過ぎなんだよ、あいつ」
ぶっきらぼうを装う秋夜の頭上に、夏のキラキラとした日射しが降り注いでいた。あとひと月もすれば気温は更に上昇し文字通りの真夏を迎える。その頃にはもうひとつの”真夏”との間にも熱い季節が訪れるだろうか――そんな想像を胸に、秋夜は逸る気持ちを抱き締めながら昇降口をくぐったのだった。
その夜のことだ。ベッドに寝転がり、相変わらずに真夏のことを思い巡らせていた時、スマートフォンの画面に登録したばかりの”源真夏”の文字が映し出されて、秋夜は慌てて飛び起きた。
『もしもし、秋夜か?』
苗字ではなく、いきなり名前で呼ばれてドキリと心臓が跳ね上がる。
「お、おう……」
『良かった。ちゃんと架ったな』
電話越しにでも分かるような、にこやかな感じの声音が更に心拍数を加速させる。
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