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第7話

 大学までは電車で二駅だった。 「なんでそんな中途半端なとこにしたの?」  学食で由比が、吉野の奢ったA定食に箸をつけながら尋ねてくる。これは自主休校にしてしまった必修科目の出席とノートの代償だから、仕方がない。  部屋は律と決めた。律の出勤にも支障がなく、吉野の通学にも支障のないところということで、中核ターミナル駅の最寄りにした。余り大学に近いところに部屋を借りると、友人たちのたまり場に使われると律に教えられて、少し離れたところにした、という理由もある。でもそれをそのまま言うのは躊躇われた。 「え、と、便利だから?」  無難な答えをしてみた。由比はそれに納得したらしい。「まあ、便利だよな。遊ぶとこもあるし」それにはてきとうに同意しておく。 「遊んで終電逃したら、泊めてくれ」  冗談めかした由比が、頼みごとをしてくる。由比は確か実家から通っている。片道一時間半くらいかかるとか言っていた。  由比はいい友人だからその頼みごとはききたいけれど、多分無理だ。 「え……」  箸を止めて何と言い訳しようかと戸惑ってしまっている吉野を見て、由比は首を傾げた。 「どした?」 「泊めるのは、多分、無理」  ごめん、と謝ると、「え、いや、もしもの話だし」と由比の方が戸惑っている。  もしもでも、だめなんだ。 「え? え? どういうこと」  俯いてしまった吉野に、由比がわけがわからない、という顔をする。 「一緒に、住んでる人が、いるから」  由比にも、他の人にも、「一人暮らし」だと伝えてあった。嘘に近いことを今さら訂正するのは、心が痛む。  生姜焼きをつついていた由比の箸が止まる。由比の顔を窺うと、目を剥いている。 「は? え? 同せ」 「一緒に、住んでる、だけ」  由比の想像が下世話な方向に向かう前に、吉野が一語一語強調して訂正していく。律との間には疚しいことは何もないのだけれど、由比の想像するようなこともないわけで、それは違うと思ったのだ。 「え? どんな人っ?」  それでも由比は食いついてきた。 「え……社会人?」  吉野は無難な答え方をする。変な汗をかいて、箸をつけているごはんの味がしない。 「年上かーっ」 「いいなー、年上っ」「社会人っ」「俺もそういう人と恋したいっ」吉野の一言に対して、由比のリアクションは大袈裟だった。それに驚いた吉野は釣られて、言葉を零した。 「うん、好きな人。いいよね」  口にしてから、頬がほんのり熱くなった感覚があった。それを隠すように、味噌汁をかき込む。

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