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第19話
「よいしょ」と律に抱きかかえられて、吉野はベッドに連れていかれる。その間中、「やだ、恥ずかしいっ」「降ろして」「歩けるっ」と喚く吉野に、「うんうん、そうだね」「吉野くん、軽くない? ちゃんとごはん食べてる?」「ていうか、これからもっと恥ずかしいことするからね」と律がひとつひとつ返していく。「これからもっと恥ずかしいこと」と言われて、吉野は瞬時に黙った。
これから僕、何されるの。
予備知識は以前こっそり見た動画である程度はあるはずだ。でも見るのとするのは全くの別物で、さらに律にされるとなると、心臓がどきどきする。顔が赤くなるのが吉野自身でもわかる。
ベッドに着くと、丁寧に座らせてもらえた。それから律に、まっすぐ目を見て言われた。
「嫌なことがあったら、絶対言うんだよ」
緊張で言葉が出なくて、こくこくと頷くのが精一杯だった。これから律に抱かれるのだということが、実感を伴ってくる。そんな借りてきた猫状態の吉野を律は笑って、吉野の眼鏡を丁寧に外したあと、伸ばした指先で髪の毛を梳いてくれた。
「吉野くん、いい子」
慈しむような指の動きが好きで、ずっと撫でられていたい。いつの間にか目を細めていたらしく、「猫みたい」と笑われた。言い返そうとしたところを、そのまま顎を掴まれて、キスされる。はじめは触れるだけのものを何度も、くすぐったくて文句を言おうとしたところで舌を入れられた。
「ふ、……んん」
律の舌は吉野の歯列をなぞり、口蓋をぺろりと舐められた。ぞくぞくする。腰のちからが抜けそうだ、と思ったら、律が腰を支えてくれた。「吉野くん、いい子」と呟くと、律はまた角度を変えたキスを繰り返す。ぎこちなく動く吉野の舌も、きちんと絡めてくれる。それが気持ちよくて、段々と吉野の方から舌を差し出していく。くす、と笑った律が、また「吉野くん、いい子」と髪を撫でてくれた。律のキスも律に褒められるのも、とても心地よい。脳みそが蕩けそうになる。
ずっとしていてもいいな、と思ったときに、律の手が吉野のTシャツの裾にかかった。
「じゃ、脱いじゃおっか。はい、ばんざーい」
キスの余韻に浸ってぼうっとしている間に、律に手際よく服を脱がされてしまう。その上いつの間にかシーツの中に沈み込まされていた。急に現実感が押し寄せてきた。「あ、せんせぇ」と律にしがみつくと、律は吉野の耳元に顔をうずめて、「吉野くん、いい子だから」と囁かれる。それだけでぞくりとして、吉野は律の背中にぎゅっと抱きついた。
「吉野くん、そんなに抱きつかれたら、何にもできない」
無垢の耳介を舌が這う水音で頭がいっぱいで、吉野は律が何を言っているのかわからない。吉野が律の首に回した腕を、律は丁寧に解いていく。それは手持ち無沙汰で嫌だな、と思っていたら、吉野の指に律の指が絡んできた。
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