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第20話***

「吉野くん、いい子でしょう?」  言いながら律は、額、目蓋、鼻先、頬、唇に、ちゅ、ちゅ、とキスを落としていく。それは首すじにも続いて、鎖骨の浮き出た皮膚を強めに吸われた。「……っ」思わず声にならない声を上げる。律が小さく笑う。 「あれ?」  律がそれに気付いてしまった。吉野は耳まで熱が集中する。 「キスだけで感じちゃった?」  律が膝頭を、吉野の敏感な部分に無遠慮に押し付けてくる。ぐりぐりと押されて、「ひっ」「や……ぁ」と意味のない言葉が口をついて出てくる。 「嫌?」  指を解いた律が吉野の腿を掴んで、尋ねてくる。意地悪だ。吉野はふるふると首を横に振るのが精一杯だった。 「それじゃあ、」と下着も脱がされる。呆気なく、吉野は一糸まとわぬ姿にされた。反射的に脚を閉じようとするのに、「吉野くん、脚、開けて」と律がそれを赦さない。  ナイトテーブルをごそごそと漁っていたかと思うと、ローションのボトルを取り出した。それを自身の手のひらに垂らす。 「ちょっと冷たいかもしれないけど、我慢できる?」  言いながら律の体温で多少温まったローションを、勃ち上がった吉野自身に垂らす。「ひゃっ」敏感な部分への刺激に吉野が声を上げる。  吉野の反応に気をよくしたらしい律は、手のひらで熱を持った吉野自身を扱く。 「ぁ……っ」 「は、……んんっ」 「せんせ、……ぁあっ」  喘ぎ声を漏らしながら、吉野は何とかして律の手を止めようとする。 「せんせぇ、や……ぁん」  それを耳聡く律は聞き取る。 「吉野くん、嫌だった?」  それには吉野は荒い呼吸をしながら、首を横に振った。「僕ばっか、や、です」  それに律は深く溜め息を吐いた。「どうなっても知らないからね」  そう言って、ローションに塗れた律の指が吉野の後孔へと伸びる。「ひっ」吉野が小さく悲鳴を上げた。すぐさま「大丈夫?」と訊かれて、健気に頷くと、指の動きは再開した。  ぐ、と後孔に違和感が襲う。中で蠢く感触に、あ、律の指が入ったのか、と気付く。 「は……、せんせ」律を呼ぶけれど、呼吸が上手くできない。 「吉野くん、いい子」  律があやすように耳元で囁く。その間も指の動きは止まらない。そして律の指の腹がある一点をぐ、と押した。 「ひゃっ」  予期していなかった刺激に、甲高い声を上げてしまう。律がにんまりと笑った。「ここ?」  それから執拗にそこばかり擦られる。ぐ、っと押される。 「ぁ、あ……っ」 「や……んん、イっちゃう……っ」  次の瞬間、びくっと吉野のからだが痙攣した。けれど精液が出た様子はない。吉野ははくはくと呼吸をしながら、戸惑って律を見上げる。けれど律は「吉野くん、いい子、いい子」と頭を撫でてくるだけだ。

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