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閑話休題(一年半後の話。)とお礼
※アルハラ、だめ、絶対。
大学二年生になった。秋だった。大半の学生が成人して、学生が五人も集まれば騒々しい飲み会がはじまる。
講義の終わったあと、由比はスマートフォンでメッセージを送っているらしい来宮に声をかけた。
「来宮も来るだろ?」
何に? 飲み会に。わざわざ言うまでもない。
来宮はスマートフォンから顔を上げて、「行く」と答えた。染めていない黒髪は癖がないのかさらさらと流れて、ノンフレームの眼鏡の奥にはネコ科の目が由比を捉えている。この顔が一部の女子に人気のあるのを、由比は知っている。
「律さんに断ってあるから、大丈夫」
来宮との会話にちょくちょく出てくる「律さん」という人は、来宮の同居人らしい。詳しくは知らない。ただ、普通同居人に飲み会に参加することまで報告するだろうか。ちょっと過保護な人なのかもしれない。
面倒なことにならなければいいな、と思いつつ、「五時半に店の前で待ち合わせな」と伝えた。
そして三時間後、件の居酒屋のテーブルの上には、中途半端に手が付けられた揚げ物の類いときゅうりの漬物、それとたくさんの空きグラスが雑多に載っていた。
「来宮ぁ、次、何飲む?」
飲み放題のレモンサワーはアルコールが薄かった。最近やっとはたちを迎えた由比たちには丁度いい程度のアルコール濃度だろうけれど、もう少し破目を外したい。それなのに来宮は素っ気ない。
「んー、ウーロン茶」
既にサワーを二杯飲んでいる来宮の頬は、ほんのり紅潮している。酔ってるのか、少し目がとろんとしている。
「まだはじまったばっかじゃん。すみませーん、ウーロンハイふたつっ」
通りかかった店員に勝手に注文する。由比は来宮ともっと話を掘り下げたいのだ。そのためにはアルコールが必要だった。
「ちょ、だめだって。律さんに怒られるから」
慌てる来宮に、「その『律さん』がどんな人か知らないけどさ、俺たち大人よ? 何でも言う通りになる必要なくね?」ともっともらしいことを言って聞かせる。大人と言ってみたけれど、それは年齢的な線引きの上でのことで、実際の中身はまだ子供と大差ない。
「うん。でも約束したから」
煮え切らない来宮に、無理矢理ウーロンハイを持たせる。そして声を潜めて、隣に座る来宮をつついた。
「そんなことより、来宮の好きな人のこと教えろよ」
この一年以上、来宮はこの話題をのらりくらりとはぐらかしてきた。今わかっているのは、この大学の子じゃないってことくらいだ。
「え、……年上の人」
戸惑った来宮はそれだけ吐いた。これは根気よく訊けば答えてくれるタイプかもしれない。
「誰に似てんの? 芸能人とか」
「……犬?」
「犬? 何それ」
「あ。おでこのかたちがきれいだよ」
来宮の答え方の所為か、いまいち盛り上がらない。それでも来宮は楽しそうに、ふふ、と笑っている。
「他になんかないの」
由比がしぶとく追及すると、「えっと、最近卵がとろとろのオムライスが作れるようになったよ」と報告された。手料理を食べる仲なら、くっつくのも時間の問題のような気がする。
「年上で、料理を振る舞ってくれる人っていいよなあ」と嘆息混じりに言うと、「いいでしょ?」と来宮がへらへらと応じるから腹が立った。
「お前なあ」
酔い潰してやろうか、と思う。
実際は、来宮は酔い潰れる程は吞まなかった。ピッチが早くなった由比が潰れた。
店を出ると、「ほら、由比。水飲みなよ」とペットボトルの水を差し出される。
「大丈夫? 帰れる?」
来宮が心配してくれる。他の連中は二軒目に行くのか、楽しそうに騒いでいる。
「ありがと」
差し出された水を飲んで、来宮を見上げる。来宮ともう少し話していたい。
「僕、迎えが来てるから、帰るね。由比、気を付けて」
けれど来宮はさっぱりしていた。まっすぐ駅のロータリーに向って歩いていく。途中で来宮に並ぶ男性がいた。セールスか何かに捕まったのかと思ったけれど、そういう様子もない。来宮はその人と並んで駅に向かう。
遠くてよく見えないけれど、露わになっている額はあたまがよさそうなかたちをしていた。一瞬、あ、もしかして、と思ったけれど、まさか、と由比は首を振る。
「由比は次、行くかー?」
友人が由比を誘ってくれる。それに答えるために、一度ペットボトルの水を含んだ。
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『せんせぇ、好きなの。キスして。』を読んでいただきありがとうございました!
お気に入り、しおり、リアクション、どれもとても嬉しかったです。ありがとうございます。
また、今回は通知をたくさん送ってしまった日もあり、騒々しくて申し訳ありませんでした。
誤字や脱字等あったと思います。ご報告いただけますと、ありがたいです。
最後になりましたが、お話で少しでも楽しんでいただけましたら、幸いです。
kamma
■追記■
微妙に書き足りない気もしています。
お声かけいただくか、
キス話→「笑った」ボタン
えち話→「エロい」ボタン
で、ご入用でしたら書きます。
期間は短いですが、2021年6月11日21時まで、です。
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