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前編 真っ直ぐな想い/4
「…で、何で今日もお前は此処にいるんだ」
「だってテスト期間も終わったし、今週は余裕あるんだよ~」
「……ハァ」
カチャカチャと音をたて、食器を洗いながら隼人が話しかけてくる。
「昨日さぁ、友達に最近オススメのデートスポットとか色々聞いてきたんだ。
映画が嫌なら場所変えるし。他にも楽しそうな所結構あったから」
俺の機嫌を窺ってるのが見え見えだ。
というか、それよりも何よりも。
「デートスポットって何だ!お前は俺と何がしたいんだ!?」
「…な…何って……それは…っ」
ああぁっ、もぉっ、なに顔を赤らめてるんだこいつはっ!こともあろうに男子高校生が三十路前の男相手にっ!
俺は隼人の作った卵焼きにフォークを突き立てると、頭ごなしに怒鳴ってやった。
「いいか、行かないと言ったら行かないんだ!
何か?お前は俺と恋人同士にでもなったつもりか!?お前は俺の姉貴の子だ、 それ以上でもそれ以下でもない!」
そう吐き捨てると、俺はさっさと支度をして家を出た。
しかし、いつものように俺の後ろを追って出てくる隼人の姿は無かった。
電車の中。着信に震えるスマホのメール画面を開くと、そこには
『ごめんなさい』
そう、一言だけ書かれていた。
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